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2007年11月18日 (日)

ムーデーィズのレポートと過払い金返還最高裁判決の理解

ムーディーズの11月付けのスペシャルレポート「日本の消費者金融債権ABS 過払い金返還請求のリスクーそのリスク量の拡大」を読んだ。

中堅消費者金融会社クレディアの会社更生を期に流動化のために信託銀行などに譲渡された「利息制限法超過の貸付債権」について平成16年2月20日以降の最高裁判決を引いて現在における過払い金返還請求の法的な整理が丁寧に行われている。その上でリスク分析がされている。

その内容をここで紹介するわけには行かないが、このブログの読者は、読まれた方が多いと思われることから、レポート中に取り上げられた最高裁判例の解釈にやや疑問があると感じたことをおせっかいながら、指摘しておきたい。

まず、平成19年6月7日最高裁判決であるが、レポート記載のように、カードによる継続的貸付を予定する基本契約がある場合は、過払い金が発生したときに、他の借入債務がないときは、その後(本件の場合約3年後)に発生した借り入れにも充当する合意があるものとし、充当を認めたが、調査官解説(判例時報、判例タイムズ)では、「本判決のいう充当に関する合意は、当然には異なる基本契約について過払い金の充当を認める趣旨のものではないように思われる」とされていることに注意を払うべきと思われる。

また、引用にはないが、平成19年2月13日最高裁判決は、基本契約がない限りは、充当に関する特約がない限り、充当されないという結論であり、やはり調査官解説では、「基本契約が存在せず、第一の貸付に係る過払い金が発生した後に、、第2の貸付に係る債務が発生した場合について、第一の貸付に係る過払い金が第2の貸付にかかる債務に当然に充当されると解することは行き過ぎといわざるを得ないように考えられる」と書かれている。

そうすると、レポートにある「貸金業者が過去に収受した『過払金』は、従前の契約だけにとどまらず、新たな契約にも充当されるものとされ、リボルビング方式だけにとどまらず証書貸付方式を採用していた貸金業者についても、過払い金返還請求リスクが接続することになった。また、同一の貸金業者が提供する異なる商品の間でも、過払金の充当がなされ得ると考えられるようになった。」というのは、言い過ぎのように思われる。

手形貸し付けの借り換えのように個別証書貸付を使う場合はともかく、別々の時期に証書貸付を行う場合は、「基本契約による合意の推定」は適用されなく、当然には充当されないというのが現行の解釈と思われる。
同様に、異なる基本契約(カード契約)の場合も、「複数の基本契約にまたがる合意の推定」もできないとするのが今の最高裁判決の状況ではないかと思われる。

おせっかいついでに、貸金業法の施行時期について、誤解があるようなので、指摘をしておきたいと思います。
「貸金業法の改正」のくだりでは、「将来支払う返済額の合計額」が、上限金利引き下げに先行して、『書面交付事項』とされるとの記載が見られるが、これは誤りで、上限金利引き下げと同一時期である(規則13条1項1号タ)。
ついでに指摘するなら、「利息額が利息制限法を超えるときは、超える部分について、支払い義務を負わない」旨の記載は、新たに行う貸付の利息が、利息制限法の範囲内であれば、記載の必要がない。つまり、基本契約のなかには、過去に利息制限法を超える貸付の残高があたっとしても、この注意文言の記載が不要とのパブリックコメント回答があるので、レポート指摘のような過払い金請求の増加要因には、少なくとも貸付利息をこの12月19日の施行日までに引き下げた貸金業者には当てはまらないように思われる。

細かい点を指摘してしまいましたが、最近の動きをもれなく網羅されたいいレポートであり、格付け機関としての考え方もよくわかって有益なレポートでした。

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