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2008年2月 8日 (金)

基本契約に基づく個別貸付が回数指定払いの場合の充当方法に関する判決

仙台地裁20年1月15日判決
過払い金の充当に関して、平成19年1月18日最高裁判決が出たので、基本契約に基づく貸付に対する充当関係の判断がほぼ出揃ったことは前回紹介した。
http://echoo.yubitoma.or.jp/weblog/toshiyoshi/eid/558713


すなわち
現時点で最高裁の判断が示されたのは、同一貸主と借主間に複数の貸付契約がある場合として、
�@一つの基本契約があり、個別貸付ごとに貸付金の管理がなされ、元本・利息の充当も個別に充当されるが、全体残高に応じて利息計算がなされ、残高に応じた請求額が決まる方式の場合
�A前者の基本契約が、異なる時期に締結されて、複数存在する場合
�B複数の個別の証書貸付などがあるが、全体としての基本契約が存在しない場合
3つである。
これらのケースにおいて、個別の貸付により、過払い金が発生した時点で、他の貸付債権に充当できるのか、それとも個別の過払い金返還請求として、損ザ臆するのかという争点について、
上記�@については、
過払い金発生時点で他に借入債務がある場合は、当然に充当できる(最判平成15.7.18)。過払い金発生時点では、他に債務がない場合は、充当に関する合意がなければ充当できないが、継続的借入が予定されていること、借入残高を基準として利息計算されることなどリボルビング払い等の事情に照らし、充当の合意を含むとして充当を認めた(最判平成19.6.7)
次に�Aは、充当についての合意が存在するなど特段の事情がない限り、充当されない(最判平成20.1.18日)。
最後の�Bについては、当然には充当されないので、充当合意などの特段の事情が必要である(最判平成19.2.13)。そして、従前の貸付の切替え、貸増しとして長年にわたり反復継続し、期間的に接着し、同様の貸付方法・貸付条件で行われた場合は、1個の連続した貸付と解すべきような事情の下では、充当する旨の合意を含んでいるとして充当を認めている。
このように整理できるが、実は、�@については、全体として1個の基本契約である理由として「借入残高を基準として利息計算されること」を掲げており、いわゆるリボルビング払い方式に限定されているかどうかの問題が残っていた。
つまり、一つの基本契約ではあるが、リボルビング方式ではなく、マンスリークリア方式だけの場合や回数指定払い方式の場合も、含まれているのかという問題である。これについては、今回改正された貸金業法において、17条1項書面、17条6項書面における「各回の返済期日及び返済金額」についての施行規則13条第1項第1号チにおいて、「同一の極度方式基本契約に基づく返済の条件が同種」の場合に合算した債務に基づく記載を認めている点から、「返済条件が同種」ではない、回数指定払いの場合は個別の貸付ごとに各回の返済期日、返済期間を書かなければならないことを考えると平成19年6月7日の最高裁判決の射程に入っていないのではと思われていた。

この考え方を肯定する仙台地裁で平成20年1月15日判決があり、すでに確定した。(判例集等未掲載)
本件の概要は、基本契約の下、平成7年以降約10年間の取引がなされているが、1回の借入ごとに元利金を完済し、その後一定期間(最短で3日間、最長で137日間)を置いて新たな借入を行って完済するというという取引形態であって、アドオン払いである1回払いを除くと全てが回数指定払い方式であって、いわゆるリボルビング方式は含まれていない案件である。
この事実認定のうえ、「基本契約に基づく債務の弁済は、各貸付ごとに個別的な対応関係を持って行われることが予定されていたものであり、基本契約に基づく借入金の全体に対して行われると解されるものでなかったことが明らかである。以上によれば、本件基本契約が、発生した既払い金をその後の新たな借入債務に充当する旨の合意を含んでいると解することができない。」
「また、前記の通り、本件取引において、破産者(既払い金返還請求者〜筆者注記)が被告からの1回の借入ごとに元利金を完済し、その後一定の期間をおいて新たな借入を行って完済するという取引形態がとられていることからすると、各貸付の際にその後の貸付が当然想定されていたとは考え難いし、破産者と被告の間との過払い金の充当に係る特約が存在するなどの特段の事情も認められない」
「本件取引は、元利金等分割返済方式によって返済する旨の約定の下、従前の貸付の切替え及び借増しとして、長年にわたり同様の方法で反復継続して、行なわれた貸付でないし、前記の通り、各貸付と個別的な対応関係をもって行なわれたものであることからすると、本件取引を全体として1個の連続した取引であると認定することはできず、破産者及び被告が発生した過払い金をその後の新たな借入金債務に充当することを合意していたと解することはできない」

と、上記の最高裁判決における充当に関する基準に照らした上で、それらをいずれも否定して、充当を認めていない。
また、月刊消費者信用2008年2月号(p70)にも、基本契約があって各貸付ごとに償還予定表に基づき、元利均等払いで弁済し、その弁済が終わると基本契約書を返還して、新たな借受の際は、基本契約書を締結して、元利金等支払をしていた場合で第一の完済日と第二の貸付の借入日が近接しているが、切り替え、又は貸し増しのための貸付の実態がないというような事情から、「全体として1個の連続した貸付取引と見ることは困難」で「充当の合意があったとは解せず」その他充当合意はなかったと判断した東京高裁平成19年12月12日判決が紹介されている。

このように、基本契約が1個で、複数の貸付があっても、各々が独自に弁済がなされる回数指定の分割弁済の場合や複数の基本契約がある場合について各々の契約条件(金利、支払方法、返済時期など)が異なっている場合は、同一当事者間の取引であっても、全体がひとつの連続した貸付の契約と見ることはできないという裁判所の判断が定着してきているように思われる。
実務でも、複数の貸付基本契約があっても、クレジットカードのキャッシング取引とローン専用カードの貸付けを典型に、仮にローンカード同士であっても、返済約定日が別々であったり、貸付利率が異なっている場合、返済方式が各々異なっているから、複数のカードが発行されているのであるから、これらの複数の基本契約が連続したひとつの貸付取引と考えることはできないと思うので、実態を反映した判断であると思われる。
何はともあれ、ここ最近の判決で充当関係の争点が整理されたので、サービサーなどが利息制限法に引きなおして買い受ける場合の計算方法として参考になるといえる。

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