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2009年3月 4日 (水)

最高裁平成21年3月3日判決の田原睦夫裁判官の少数意見に納得

平成21年1月22日判決と同じ争点の判決が注目されていたが、昨日言い渡された。

しかし、本日の新聞各紙に目を通してみたがまったく記事がない。
その理由は、2つ考えられる。
ひとつは、判決内容が同じ結論であったので、もはや報道するバリューがない。ということだろう。

しかし、判決文をよく読んでみて欲しい。
田原睦夫裁判官(弁護士出身)の反対意見がある。
反対意見は、「過払金返還請求権の消滅時効は、その発生時から進行すべきものである(中略)源範消すに違法な点はなく、本件上告は、棄却されるべき」というものである。

その根拠として、
�@過払い金充当合意のある契約であっても、合意の存在が、過払い金返還請求権の行使において法律上事実上なんらの支障を生じさせるものではない。
�A「明示の特約が定められていないにもかかわらず、過払金充当合意に上記のような(筆者注。多数意見が認定した取引が終了した時点で返還請求権を行使するという合意のこと)過払金返還返還請求権の行使期間に関する合意まで含まれていると解することは、契約の合理的な意思解釈の限度を超えている」「契約当事者が契約締結時に通常予測していたであろう内容とまったく異なる内容の合意の存在を認定するものであって許されない」
�B多数意見認定のような過払い金請求権行使権の留保と借入ができる地位を保持左折ことが法的に保護するに値する利益とは考えられない。
�C時効制度が商業帳簿の保存義務が10年であること、及び時効制度の立法趣旨、その他機関に関する他の制度と矛盾する結果を生じ、当事者に予測外の結果をもたらすこと。
�Dこのような合意を認めると、現在取引中で今後も借入を希望する借主の利益にかなうものとは、必ずしもいえない。利益を得るのは、取引を終了した一部の借主に限られるが、かかる借主の保護のために契約の意思解釈の枠組みを著しく拡大することは妥当とはいえない。
�E1月22日判決が引用した平成19年4月24日最高裁判決等は、自動継続特約付の定期預金契約における払い戻し請求権の消滅時効の起算点に関する判例であって、明示の特約のあるものに対する先例を本件の先例とすることは適切を欠く。

というものである。

私も1月22日判決に対しては、以下の通りコメントしてきているが、

ついに自動継続的定期預金となった過払金返還請求権
このなかで、�A�D�Eについて指摘しておいた。�@�Cについては、当然に貸金業者から主張されているものである。

田原意見の中で、特に注目なのが、�Dの今回の原告への保護が他の借主の保護につながらないのではないかという指摘である。

私も、平成21年1月22日判例が仮に定着し、あらゆる基本契約があるものに適用が拡大していくこととなると、クレジットカード取引についても、十年くらい前には、利息制限法超過貸付があったので、過払い金返還請求が出てくるおそれがあるので、クレジットカード契約まで終了させる必要が出てきかねないと書いた。
つまり、一部の完済者やすでに貸金業者から借入の必要のなくなった一部の元借主の利益ために、資金が必要で、借入を継続しなければならない現役の借主が迷惑を被るわけである。

裁判では、係争となった案件を解決するのが最大の目的であるが、判例の生む影響、特に最高裁判所の判例の影響を考えると当該判決が及ぼす他の関係者への影響を考えねばならないと思う。

NBL900号で「ここがヘンだよ日本法」という特集があり、第2セッションで「日本金融法の規制影響評価」が取り上げられているが、法律を作り、規制を加える場合に、国民経済に与える影響を一般抽象的に考えるのではなく、国民経済全体、事業者、取引、顧客・消費者にどのようなインパクトを与えるのか、具体的に数値化し酢量化して評価すること、複数の選択肢を挙げてその長所短所を分析することとしての規制影響評価の問題が取り上げられている。

官製不況の原因とされた法律の立法、改正にはこのような視点が欠けていたものと思われる。しかし、その反省を踏まえ、立法では「行政機関が行なう製作の評価に関する法律」により平成19年10月から、事前評価が義務つけられるようになり、変わろうとしている。

このような時期に、田原最高裁判事の少数意見は、大変示唆に富むように思う。

裁判所の契約意思の合理的解釈について、他の関係者、事実上の利害関係者に与える影響や国民経済全体に与える影響も含めて多面的な角度で行なわれるべきではなかろうか。
特に立法的効果のあるといわれる最近の判決をみていてそう思われてならない。

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コメント

追記

政策研究員大学の福井秀雄教授が「CREDIT AGE2009年2月号」で、貸金業法の見直しを規制改革会議で答申し、閣議決定したことに関連して以下のように述べておられます。

「問題は、いわば最高裁が経済社会を律する政策判断路したこと。みなし弁済をなくして、しかも下限に近いところに合わせるという方向性の判断は、とりもなおさず、人々の契約の自由に対する重大な介入といえます」
また、過払い請求をした人を情報登録をすることが問題になっていることに関して、「そういう情報が貸金業者にわからないと全体として貸して側は与信審査を厳しくする、ないしは金利を上げることで対応せざるを得なくなります。しかし、現在金利は人為的に非常に低く規制されています。ということは貸し手は市場から退出することで防衛策を講じざるを得なくなる。借りても減少します。果たしてそれは借り手のためになるでしょうか。」「過払い金返還請求の事実もきちんと登録させることをむしろ政府が奨励すべきなのです」とも語っておられる。

閣議では、「平成18年の貸金業法等の改正後の規定の実施状況、貸金業者の実態、市場の実態等について実証的な観点から調査分析すべきである」との提言を受けて、閣議決定されており、平成21年度中に金融庁が調査分析を行い、規制改革会議でこれを検証することになっているようです。

前半部分に氏が述べられている、憲法の下での自由の保護と市場での失敗の場合のみ政府が介入できるという基本的な基準について、その場合における法と経済学の貢献についても大変共感するところであります。

職場が変わってから、大学の1年先輩のN教授に誘われ、経済関係の研究会にも顔を出すようになってから、30年以上前に習った経済学の理論等について思い出しつつ、法と経済学を考えています。

投稿: 品川のよっちゃん | 2009年3月 4日 (水) 16時00分

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