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2009年3月13日 (金)

またまた、最高裁判決。今度は所有権留保権者は、窃盗罪覚悟で車の換価処分を迫られる?

平成21年3月10日最高裁第三小法廷で、車両撤去土地明渡等請求事件の判決が言い渡された。

事案は、簡単にいうとクレジット会社からオートローンで自動車を購入していたAが、地主B(本件の上告人)と駐車場の利用契約を締結していた。
しかし、Aは、自動車を放置したまま駐車場料金を払わない。そこでAを相手に駐車場料金の支払いを求めて提訴し、確定判決に基づいてAの給料債権を差し押さえている。しかし、相変わらず、自動車は放置されているので、地主Bは、この自動車の登録内容を調べ、所有者であるクレジット会社C(本件の被上告人)に、自動車の撤去と不法占有によりこうむった損害の賠償?と土地の明け渡しを求めたものである。

原審では、Cの所有権登録は、クレジット代金債務の担保目的で設定した所有権留保なので、撤去・明け渡しの義務はないとしたが、最高裁は違った。

なんとクレジット契約における所有権留保の特約について、期限の利益喪失による残債務全額の弁済期の前については、留保所有権は担保的機能に限られ、車両の占有・使用権原を有しないが、後は、車両の引渡しを受けて、これを売却してその代金債務を残債務の弁済に充当することができることから、留保所有権が担保権の性質を有するからといって、撤去義務や不法行為責任を免れることはないと解するのが相当とした。
もっとも、残債務弁済期の経過後であっても留保所有権者が土地所有権の行使を妨害している事実を知らなければ、不法行為責任は問われないとし、知った後に不法行為責任を負うとしている。

しかし、これには論理の飛躍があるように思われる。
事前に一定のイベントに該当したときに、留保所有権に基づき物件の引渡しについて合意をしていた場合、そのイベントが到来したから、なんらの通知や承諾なく直ちに占有・使用権原を留保所有権者が取得し、処分権原があるとしていいのであろうか。

特に、自動車の場合使用・処分に鍵など、正当な使用者である旨の認証的機能を持ったものが必要であり、最近は生態認証の鍵も普及しているからなおのこと本人の協力を得る必要がある。
使用権原の移転の象徴物(鍵など)の受け渡しを得ないまま、(追記 占有改定の合意すらないまま。それとも所有権留保の特約の締結が占有改定のひとつの方法なと見るなら、その理由が挙げられると思うがそれもないまま)占有・使用権原を取得したものと扱うのは、現実とあまりに乖離しているように思う。

また、期限の利益を喪失しても、自動車の利用が生活や通勤・通学、介護などのために必須な場合が多く、引渡しの折衝を行っても引き上げないように依頼される場合もある。同意を得ようにも連絡が取れないが、自動車を動かし、契約者が自動車の占有状態にあることがわかる場合も多い。このような場合に、特約に基づき、引き上げを強行しようものなら、保管場所への不法侵入、占有物の窃盗罪に問われかねない。

最高裁自体も昭和35年4月26日判決で「不法な占有も、本罪における保護の対象となりうるから、トラックが譲渡担保に供され、その所有権が債権者に帰属したが、引き続き債務者が占有保管中、債権者がそれを無断で運び去る行為は窃盗罪を構成する。」という判決を出しているのである。

今回の判決では、譲渡担保より所有権的構成が薄く、倒産法実務でも担保とされ、破産法では、別除権として扱われている所有権留保の場合であるから、より窃盗罪とされる可能性が強くなるのではないか。

留保所有権者は、地主と駐車場利用契約をしたわけでもなく、保管場所としてクレジット契約者に当該駐車場を指定したわけでもない。
駐車場に駐車している自動車の鍵を保有しているわけでもなく、所有者であるクレジット契約者から現実に引渡しを受けているわけでもない。

このような状態でもクレジット会社が自動車の引渡しを受け、当該自動車を支配して、占有している状態にあると判断したのであろうか?
(追記 そもそも、期限の利益喪失時点で現実の保管場所が自動車検査証記載の場所とは限らないのであるから、保管場所も、使用できる現実的手段もないのに、占有・使用権原を有し、撤去可能な状態であるのに撤去していないとの事実認定における評価が納得がいかない。だから、現実に地主の土地利用権を妨害していることを知ったときから、不法行為と認定しているようにも思えるが、相手方は鍵を持っており、占有を失っているとはいえないことや撤去という行為が窃盗罪を構成する可能性があるのに、そのことに言及していないことにも腑に落ちない〉

このように地主に対する撤去義務を果たそうとすれば、刑法を犯しかねないということになる結論には、きわめて違和感がある。

倒産実務を含めて、実務に相当の混乱を生じせしめる判決ではないか。

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