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2009年9月13日 (日)

貸金関係の最高裁判決が4件も

9月4日から出張や北海道旅行で1週間にわたり、ネット環境に恵まれなかったところ、この一週間に利息制限法超過貸付にかかる不当利得返還請求事件で何と4件もの最高裁判決が出ていることを遅まきながら知った。判決は以下の4件。

平成21年9月4日最高裁第二小法廷判決 破棄差し戻し

平成21年9月4日最高裁第二小法廷判決 棄却

平成21年9月11日最高裁第二小法廷判決 破棄差し戻し

平成21年9月11日最高裁第二小法廷判決 棄却

①は、「過払い金充当の合意のある契約」として、将来発生する貸し付けでの過払い金への充当がなされる場合の民法704条前段の利息(5%)の支払い義務に関する判決である。

過払い金が発生している場合に、貸主が悪意の受益者に該当するときは、過払い金が発生した時点から民法704条前段の利息(5%)を支払わなければならない(大審院昭和2年12月26日判決)が、基本契約に基づく貸付の場合に、最高裁が「過払い金充当の合意のある契約」として、将来発生する貸し付けでの過払い金への充当を認めたため、この場合利息は発生しないとの考え方もあった。しかし、第二小法廷は、これを否定し、過払い金充当合意のある基本契約の場合も大審院判決のとおり、利息の支払い義務を認めた。

これで、過払い金充当合意のある契約に関しては、原則として、過払い金に利息を付けなければならないことになったが、「貸主が悪意」の場合なので、7月の最高裁判決で「貸金業者の悪意の時期」に関して証書貸し付けに関してであるが、平成18年1月13日判決時点までは、当然に悪意ではないとする判断を示しており、今後は借主の悪意を推定する時期についての判断が待たれる。

一方、②の判決は、多くの貸金業者にとって朗報だろう。

利息制限法超過利率での貸付により、過払い金が生じた後にも弁済金を受領する行為が、「不法行為」であるとして、不当利得の返還請求権の消滅時効期間を経過した場合に不法行為により過払い金相当額の返還を認めた下級審の判決などもあり、貸金業者の決算や会計上も大きな問題となる可能性があったが、最高裁は、事後的に貸金債権が存在しないと判断されたり、結果的に多額の過払い金が発生したことのみをもって不法行為を直ちに構成することはないと判断した。

これにより、「不法行為」とされるような暴行、脅迫等を伴っていたり、貸金債権の請求が法律的根拠を欠くと知りながら、もしくは容易に知ることができるにもかかわらずあえて支払いを請求するなど社会通念に照らして著しく相当性を欠くような場合でない限り、過払い金相当額の損害賠償ができないことが明確になった。

次に③と④については、「期限の利益の喪失特約」に関する判決で、片方は有効、片方は、期限の利益の喪失を認めていない。

一見矛盾するように見えるが、判断基準は当然同一であり、まあ妥当な判決ではないかと思う。これにより、期限の利益喪失後は、きちんと遅延損害金を明示し、受領書を交付しておけば、利息と遅延損害金が同率であるなど、あたかも期限の利益の喪失が生じていないような、もしくは期限の利益を再度付与されたような誤解のある請求方法によらない限り、期限の利益喪失を主張できることになる。

特に、期限の利益喪失後に、新たに別口の貸付を行ったことが期限の利益が存続していることの根拠とならないことを明確にした点は大きいのではないか。

これにより、期限の利益喪失後の引きなおし計算は、以降利息制限法所定利息の1.46倍(改正以前は、2倍)の遅延損害金で計算できることになり、貸金業者にとっては貴重な判決と言える。

判決的には、貸金業者にとって2勝2敗になるが、内容的には納得のいく判決であろう。

一方、過払い金請求側の弁護士や司法書士にとっては、7月の最高裁判決で貸主の「悪意の受益者となる時期」が大幅に後退したことに加え、今回期限の利益喪失特約の有効性が確認されたことで、かなり請求額が減ることとなり、大きな影響が出るだろう。

しかも、最終取引から10年を経過した場合には、過払い金の返還請求権の消滅時効が成立し、暴力的取り立てをするような悪徳業者でない限り、不法行為を根拠に請求するという手法が封じられたことは、すでに弁護士さんのブログでも「痛い」とされているようだ。

貸金業法の改正から3年を超え、登録貸金業者が激減し、大手・中堅の新規貸付金利が利息制限法の範囲内に引き下げられて、総量規制の前倒し実施など借主の選別が進んでいる現状では、これ以上立法的解決を促すような判決の必要性がなくなったということか。

かえって、一部司法書士等の高額な報酬請求や取り戻し明細の非開示、困難案件の放置など日弁連などでも憂慮する事態が発生していることの弊害を取り除く必要性のほうに課題はシフトしてきたように思われる。

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