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2010年1月14日 (木)

過払い金返還請求履歴(コード71)の廃止

今日の朝日新聞7面の記事によると、金融庁は日本信用情報機構(JICC)の貸金業法41条の13に基づく信用情報提供等業務を行なう者としての申請を受けるに当り、今まで情報提供されてきた「コード71」を廃止させる旨決定したようである。

新聞報道にもあるとおり、過去に過払い金返還請求をした人が再度延滞に陥る確率は通常より著しく高く、「規制改革会議」でも多重債務防止の観点からリスク情報として有効との意見が強かった。

しかし、金融庁は「返還請求は顧客の正当な権利で信用情報とは直接関係しない」と判断したようだ。

ところで債権を行使する「正当な権利」を保護することと、特定の行為を信用情報やリスク情報を判断する一項目と採用することは、全く別問題ではないだろうか?したがって、金融庁の「正当な権利」を行使したことを「信用情報」として持つべきでないという考えには、根本的にリスク評価についての誤解がある、もしくは、あえて、リスク評価・信用情報としての評価をさけて、形式的判断を公表したように思える。

リスク評価・信用情報としての評価を考えようとすると、個別の与信事業者でどのような情報項目が実際にどのように利用されているのかを詳しく調査する必要がある。そうすると、個人向けのリスク情報は、それ自体が貸金契約では、○○という情報、クレジット契約では□□という情報ということで、画一的に定まったものではないことがわかるはずだ。実際は、取引の形態や金額、担保方法でそれぞれ異なるが、与信事業者は個別の過去の取引における多数の延滞者の属性や消費行動、経済活動を分析し、自社の許容するリスクを超える結果を生み出す可能性が高い属性を持つ申込者の申込を受けないようにリスク管理している。そして、そのリスク情報の項目、着眼点は、各社独自のノウハウとなっているわけだ。

したがって、例えば、1年以内xxxの商品を購入し、その後yyy商品を購入した人は、1年以内にzzz商品を購入する確率は、約80%であるという購入予想分析と同じように、1回のキャッシング額が○万円~□万円の人は、残高が▲万円以上になった場合の延滞確率が●%以上になるとか、1回払いを○回以上リボ払いに変更した人は、延滞確率が□%であるというような情報を元に、極度額の管理や契約更新の可否が判断されるようなことも行われているのである。

この場合に、共通して有効な情報項目として、契約日、利用残高、年間支払額、1回の利用額、利用商品、延滞の有無などの登録項目わけで、このような情報が利用者の同意を得て、信用情報機関に登録されており、コード71も有効性が確認されて以降利用されていたわけである。本人の契約内容、返済状況にしろ、多重債務防止の目的がなかったら、本来は自己で他者の借入情報を申告させるなどして調査すればよく、必ずしも与信事業者は信用情報機関に登録する必要はない。(信用情報機関への登録は、与信事業者の債権保全目的であって、多重債務防止目的ではないのではないかと反論の向きもあるかもしれないが、登録貸金業者4909社のうち、JICCに加盟しているのは1050社とわずか21.4%しか加盟していない。過去のデータ蓄積や分析ノウハウがない会社ならともかく、十分にデータを持ち、顧客との情報の非対称性をヒアリング、自己申告、関係書類提出と定期的な報告により埋めることができれば信用情報機関は必ずしも要らないといえる。)

しかし、信用情報機関を利用しないとノウハウや実績のない企業が顧客の借入状況や返済状況の正確な把握に失敗すると、その結果返済能力を考慮しない過剰な貸付を実行してしまうから、これを防止する目的で今まで信用情報機関を利用することが求められてきたわけである。

そして、実際に、登録されているのは、通常の借入行為に基づく貸し出し情報と返済に係る情報、これに債務整理や法的手続きの情報などであり、本人の正当な権利に基づく行為の結果の客観的情報である。

例えば、ノウハウが比較的少ない企業でも貸し出し件数が4件以上あれば多重債務に陥る可能性が高いから、新規に貸し出さないというようなルールが比較的有効とされるが、この場合にキーとなる情報は単なる貸し出し情報である。

しかし資金需要者からすると、「何社から借りようといいではないか、延滞もしていないのに貸し出ししないのは貸し渋りだ」との抗議になりかねない。もちろんこの場合も、金融庁は、件数のみの画一的審査ではなく、年収や他の借入状況、返済状況などを勘案して審査しなさいというのであろうが、法人向けの何百万円や何千万円に上る銀行の貸し出しならいざ知らず、個人事業主の数十万円・期間一月の借入に、そのような調査コスト、人件費をかけて法定利息内で貸し付けるのなら、赤字だろう。

したがって、短期・小額貸付の場合を典型に、登録された客観的な情報に基づいて、信用リスクを割り出す審査ルールを作って、すばやく判定する必要があったわけである。そもそも、リスクをとるのは、貸し出し企業であって、金融庁ではない。なのに、どのような経験値を持って、又はどのような分析の結果「コード71」が「信用情報ではない」と証明されたのか。詳しく聞いてみたいものだ。

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