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2010年2月12日 (金)

総量規制の激変緩和措置は、内閣府令の改正で可能なのか?

本日の日経5面に「改正貸金業法 6月完全施行の公算」の記事がある。

小見出しのうちの一つに「運用面での激変緩和」があり、大塚副大臣のコメントとして「さまざまな影響を極小化する工夫をする」を引いて内閣府令などの変更で対応する方針と結んでいる。

「総量規制」すなわち「収入の三分の一を超える個人過剰貸付契約」は、法律13条の2第2項の法律本文で禁止されており、これに反する取扱は業務改善命令、業務停止又は登録取消し処分の対象となる(貸金業法24条の6の3、24条6の4第1項第1号)が内閣府令の改正をするとしても、委任条項がなければ無理だ。

委任条項では、内閣府令10条の21第1項の「個人過剰貸付契約から除かれる契約」と10条の23第1項「個人顧客の利益の保護に支障が生ずることはない契約」の2種類がある。

前者は、住宅資金等の貸付や自動車の担保付購入などそもそも総量規制の対象とならない契約なので、後者の内閣府令10条の23第1項第7号、第8号の個人事業者向け審査の要件と主婦向けには、同第6号の見直し、緩和を検討しているのだろうか。

「個人顧客の利益の保護に支障が生ずることはない契約」は、個人顧客合算額の対象であるが、総量規制の三分の一を超えての貸付が認められる。しかし、個人顧客合算額の対象になるので、以降の借入をしようとしても「個人顧客の利益の保護に支障が生ずることはない契約」と「個人過剰貸付契約から除かれる契約」以外の契約は個人顧客合算額が収入の3分の一を超えている以上一切の借入は受け入れられない。たとえば借り換えしようと思っても内閣府令10条の23第1項第4号の顧客に一方的な有利借入でない限りできなくなる。(支払期間を延ばすと低利でも支払い総額が増加するので有利借り換えの適用は実質困難とおもわれる)少しくらい要件を緩和しても、実態は変わらないのではないか。

主婦の場合は、配偶者との収入の合算に伴う同意取得が問題になっている。収入を合算する場合は、借入債務も合算する必要があるので、貸金業法13条第1項、第2項により信用情報機関の情報を使って調査する義務が出てくる。この場合配偶者の個人信用情報を使って合算しなければならず、信用情報機関への調査の同意は必須である。もし同意を免除するのであれば、貸金業法41条の36(同意の取得)を改正しなければならない。

したがって、割賦販売法の支払可能見込み額調査のように、口頭同意で、配偶者の債務は自己申告という方法なら対応が考えられるが、他の厳格な規定と比較するとかなりの疑問がある。そこで、30万円までなら、自社50万円以内、又は他社残高と合算して100万円以内の残高でかつ延滞等なければ年収の調査義務を免除する割賦販売法の対応のほうが13条2項及び13条の2第2項の内閣府令委任に対応しやすいように思われる。個人事業者向け与信もこれに習い、当該事業者の事業規模、売上金額などに対応したものなら、激変緩和になる可能性が考えられる。

ただ、問題は年収が低い人は5割から7割の人が総量規制に抵触し、新規に借りられず、その数が500万人以上に上るだろうというもっと大きな問題がある。そもそも金利と借入期間を区別することなく、借入額を年収の3分の一とする厳格な総量規制がもたらす影響は、低年収の人に限った問題でもない。金融機関の貸付は別と思っているが、その保証をしているノンバンクは、貸金業界の信用情報機関の情報を見て保証審査する以上、実際は金融機関の貸付も対象になっているといってよい。

したがって、貸付金利や借入期間での条件緩和も考慮した総量規制の見直しが必要なことはいうまでもない。PTのヒアリングでは、低利業者、長期貸付業者、金融機関の意見は聴かれていないのが当局がまだこの問題をきちんと把握していないということの証左であろう。

(参考条文)内閣府令10条の21第1項の「個人過剰貸付契約から除かれる契約」

一  不動産の建設若しくは購入に必要な資金(借地権の取得に必要な資金を含む。)又は不動産の改良に必要な資金の貸付けに係る契約
二  自ら又は他の者により前号に掲げる契約に係る貸付けが行われるまでのつなぎとして行う貸付けに係る契約
三  自動車の購入に必要な資金の貸付けに係る契約のうち、当該自動車の所有権を貸金業者が取得し、又は当該自動車が譲渡により担保の目的となつているもの
四  個人顧客又は当該個人顧客の親族で当該個人顧客と生計を一にする者の次のいずれかに掲げる療養費を支払うために必要な資金の貸付けに係る契約
 イ 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第百十五条第一項及び第百四十七条に規定する高額療養費
 ロ 船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)第三十一条ノ六第一項に規定する高額療養費
 ハ 国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)第六十条の二第一項(私立学校教職員共済法(昭和二十八年法律第二百四十五号)第二十五条において準用する場合を含む。)に規定する高額療養費
 ニ 国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)第五十七条の二第一項に規定する高額療養費
 ホ 地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)第六十二条の二第一項に規定する高額療養費
 ヘ 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和五十七年法律第八十号)第八十四条第一項に規定する高額療養費
五  第一条の二の二第二号から第五号までに掲げる契約

内閣府令10条の23第1項「個人顧客の利益の保護に支障が生ずることはない契約」

一  金融商品取引法第二条第一項に規定する有価証券(同条第二項の規定により有価証券とみなされる権利を含む。)であつて、次に掲げるものを担保とする貸付けに係る契約(担保に供する当該有価証券の購入に必要な資金の貸付けに係る契約を含み、貸付けの金額が当該貸付けに係る契約の締結時における当該有価証券の時価の範囲内であるものに限る。)
 イ 金融商品取引法第二条第一項第一号から第三号まで、第十号又は第十一号に掲げる有価証券
 ロ 金融商品取引法施行令(昭和四十年政令第三百二十一号)第二十七条の二各号に掲げる有価証券
二  不動産(借地権を含み、個人顧客若しくは担保を提供する者の居宅、居宅の用に供する土地若しくは借地権又は当該個人顧客若しくは担保を提供する者の生計を維持するために不可欠なものを除く。)を担保とする貸付けに係る契約であつて、当該個人顧客の返済能力を超えないと認められるもの(貸付けの金額が当該貸付けに係る契約の締結時における当該不動産の価格(鑑定評価額、公示価格、路線価、固定資産税評価額(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第三百八十一条第一項又は第二項の規定により土地課税台帳又は土地補充課税台帳に登録されている価格をいう。)その他の資料に基づき合理的に算出した額をいう。以下この項及び次項において同じ。)の範囲内であるものに限る。)
三  売却を予定している個人顧客の不動産(借地権を含む。)の売却代金により弁済される貸付けに係る契約であつて、当該個人顧客の返済能力を超えないと認められるもの(貸付けの金額が当該貸付けに係る契約の締結時における当該不動産の価格の範囲内であるものに限り、当該不動産を売却した後に当該個人顧客の生活に支障を来すと認められる場合を除く。)
四  債務を既に負担している個人顧客が当該債務を弁済するために必要な資金の貸付けに係る契約であつて、次に掲げるすべての要件に該当するもの
 イ 当該貸付けに係る契約の一月の負担が当該債務に係る一月の負担を上回らないこと。
 ロ 当該貸付けに係る契約の将来支払う返済金額の合計額と当該貸付けに係る契約の締結に関し当該個人顧客が負担する元本及び利息以外の金銭の合計額の合計額が当該債務に係る将来支払う返済金額の合計額を上回らないこと。
 ハ 当該債務につき供されている物的担保以外の物的担保を供させないこと。
 ニ 当該貸付けに係る契約に基づく債権につき物的担保を供させるときは、当該物的担保の条件が当該債務につき供されていた物的担保の条件に比して物的担保を供する者に不利にならないこと。
 ホ 当該債務に係る保証契約の保証人以外の者を当該貸付けに係る契約の保証契約の保証人としないこと。
 ヘ 当該貸付けに係る契約について保証契約を締結するときは、当該保証契約の条件が当該債務に係る保証契約の条件に比して保証人に不利にならないこと。
五  個人顧客又は当該個人顧客の親族で当該個人顧客と生計を一にする者の緊急に必要と認められる医療費(所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第七十三条第二項に規定する医療費をいう。次項において同じ。)を支払うために必要な資金の貸付けに係る契約(第十条の二十一第一項第四号に掲げる契約を除く。)であつて、当該個人顧客の返済能力を超えないと認められるもの(当該個人顧客が現に当該貸付けに係る契約を締結していない場合に限る。)
六  個人顧客を相手方とする貸付けに係る契約であつて、当該個人顧客に係る個人顧客合算額(法第十三条第三項第二号に規定する個人顧客合算額をいう。以下この条において同じ。)と当該個人顧客の配偶者に係る個人顧客合算額を合算した額が、当該個人顧客に係る基準額(法第十三条の二第二項に規定する当該個人顧客に係る基準額をいう。以下この条及び第十条の二十八において同じ。)と当該個人顧客の配偶者に係る基準額(当該個人顧客の配偶者を当該個人顧客とみなして法第十三条の二第二項の規定を適用した場合における同項に規定する当該個人顧客に係る基準額をいう。以下この条及び第十条の二十八において同じ。)を合算した額を超えないもの(当該貸付けに係る契約を締結することについて当該個人顧客の配偶者の同意がある場合に限る。)
七  事業を営む個人顧客に対する貸付けに係る契約であつて、次に掲げる要件を満たすもの
 イ 実地調査、当該個人顧客の直近の確定申告書の確認その他の方法により当該事業の実態が確認されていること。
 ロ 当該個人顧客の事業計画、収支計画及び資金計画に照らし、当該個人顧客の返済能力を超えない貸付けに係る契約であると認められること。
八  現に事業を営んでいない個人顧客に対する新たな事業を行うために必要な資金の貸付けに係る契約であつて、次に掲げる要件を満たすもの
 イ 事業計画、収支計画及び資金計画の確認その他の方法により確実に当該事業の用に供するための資金の貸付けであると認められること。
 ロ 当該個人顧客の事業計画、収支計画及び資金計画に照らし、当該個人顧客の返済能力を超えない貸付けに係る契約であると認められること。

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