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2010年8月28日 (土)

再生手続において所有権留保を別徐権を主張するには登録が必要とされた事例

平成22年6月4日最高裁判決において「自動車売買代金の立替払をし立替金等の支払を受けるまで自動車の所有権を留保する者は,購入者に係る再生手続開始の時点で当該自動車につき自己を所有者とする登録がされていない限り,上記所有権を別除権として行使することは許されない」とする判決が言い渡され、信販会社の債権管理担当をかなりあわてさせたが、金融法務事情1904号(平成22年8月25日号)に本判決についての印藤弁護士の論稿が掲載されている。

従来から所有権留保は法文上の規定はないが、学説や通説では、抵当権や質権などと同様に破産法や和議法上担保権の一つとして、別徐権とされている。そして、民事再生法53条に「再生手続開始の時において再生債務者の財産につき存する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権又は商法 若しくは会社法 の規定による留置権をいう。第三項において同じ。)を有する者は、その目的である財産について、別除権を有する。」とされ、第2項で「別除権は、再生手続によらないで、行使することができる。」 と規定されているので、実務で所有権留保は別徐権として認められている。

ところが、このような権利を認められるのは、所有権留保の登録を行う必要があると、最高裁判所は初めて判断したわけである。

しかし、この判断には印藤弁護士の言われるように私も大きな違和感がある。

理由はこうだ。

今回の判決の対象となった信販会社は自動車メーカーの子会社であり、自動車はメーカー系列の自動車ディーラーが顧客に販売する。販売した自動車の購入者の希望により、メーカー系列信販会社の立て替え払いを利用して分割払いができるが、その支払いの担保のために自動車の所有権は信販会社に留保される。

この取引の法的性質にはいくつかの解釈があるが、自動車メーカー系信販会社がもともとメーカーの経理部門であったことを考えると、ディーラーの割賦販売債権を引き取って資金を交付するという債権譲渡と考えるのが自然であろう。そうすると割賦販売法7条は割賦販売の方法により販売された指定商品の所有権は販売会社に留保されるとの規定を置いているように、特約がなくとも自動車ディーラーに所有権留保がなされており、メーカー系信販会社は債権譲渡により、その所有権留保を代位により取得したと考えるのが、自然ではないか。

自動車ローンを購入者に対する融資取引と位置づけ、所有権留保の特約を締結したのであれば、最高裁の自判した判断も理解できるが、今回の方式では、登録制度をとる貸金業法の適用を受けない取引であることは明らかなので、どうも腑に落ちない。

次に、この判決によって、オートローンを利用して自動車を購入する人に、余分な経費負担や機動的な処分ができないなどの迷惑をかけてしまうことになるのではないかとも懸念する。

最高裁判決を考慮すると、今後は自動車ローンを利用すると、信販会社は債権保全目的で必ず自動車の所有権を自社名義に登録しなければならなくなる。

そうすると、登録名義を自動車販売会社→信販会社に移転し、使用者名義を購入者としておき、完済時に、信販会社の所有権を抹消する扱いとなるが、抹消まではたとえ支払い完了していても、車検証に所有者として信販会社名が掲載されて「ローン中」ということが表示されたままになるので、車の売却や下取りには相手方は、信販会社の支払い状況も確認しなければならない。個人のローン残高の問い合わせは、他人ができないので本人の個別的関与が必要となり、結構煩わしい。

また、信販会社のほうも、顧客が自動車税などを支払わない場合、所有者として第二次納税義務が発生するとされているところが多い。

そうすると、これらに関する費用やリスクは、すべて全利用者の分割払手数料に反映することになるからである。

民事再生債務者の再生・救済の観点から判断されたのかもしれないが、健全な利用者が一人の救済によって、迷惑をかけられることになりはしないか。

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投稿: 品川のよっちゃん | 2016年8月23日 (火) 18時25分

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