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2010年10月28日 (木)

政治家の変心,変身、それとも本心?反省は?

今朝(10月28日)の日経4面の「武富士破綻~広がる波紋」の連載記事を見て驚いた。冒頭に自民党後藤田正純議員の26日の衆議院財政金融委員会の以下の質問が掲載されていたからだ。「いきなり、過去にさかのぼってお金を返さなくてはいけないというのは経済観念からしておかしい」と。

平成18年の貸金業法の改正前の金融庁の貸金業法に関する懇談会における金融庁の政務官としての後藤田議員の果たした役割を見てきた人にとっては、「びっくり!」であり、「本当に彼の発言か?」⇒「今頃何を言う」という感覚ではなかろうか。

貸金業法の改正さなかの平成18年1月13日判決は、改正法の要綱案がまとまる半年以上も前に出ており、過払い金訴訟を手がけていた法曹関係者及び金融庁にとっては、このような事態になるということは自明なことにも拘らず、「聴く耳を持たなかったのは、どなただったのでしょうか?」といいたい気持ちである。

厳格な総量規制、取立て規制、書面交付義務を課す必要があったとしても、グレーゾーン金利を廃止した以上もう少し、過払い金や金利規制のあり方に、金融機関の消費者向け貸し出しを積極化できるような枠組みを導入すべきだったのではなかろうか。

それにも拘らず、営業的金銭消費貸借の特約を利息制限法に導入して、真逆な「みなし利息の範囲の大幅な縮小」「保証料の利息への繰り入れ」や「同一当事者に対する上限金利の引き下げ」という銀行を含む金融界にさまざまな個人市場破壊の時限爆弾を投げ入れておいて、改正後の借入需要に対する配慮や過払い金に対する対応は見てみぬ振りしたのである。

従って、貸金業界にとっては、前門の上限金利規制と総量規制、後門には、過払い金返還請求の状況に追い込まれ、銀行やファンド傘下に入り庇護を求めるか、廃業と倒産しか選択肢がなくなっているわけである。

個人ローンを期待された銀行も、既に取引のある顧客には、営業的金銭消費貸借の特約がなければ、新たな貸付が100万円未満なら18%、10万円未満なら20%までに設定して、個人向けにある程度リスクがとれる貸付が可能だったにも拘らず、上記に述べた利息制限の特則で、さらに2~3%の引き下げを強制している。

その上さらに、銀行をスルーする保証料や保険料、登記費用のための司法書士の手数料まで利息とみなされる時限改正を行い、ATM手数料の引き下げなどさらに一段の金利の引き下げを迫るような規制に放り込んで、「個人ローンの拡大」の目を残らず摘んでしまう事態になることは容易に予測されたのに、「これほどの影響を予想する声は当時なかった」という記事のコメントは信じがたい。後藤田議員の変心の前に、マスコミ自身の本件取組み姿勢の変心の推移状況をきちんと検証してもらいたいものである。

また、金融庁が過払い金に関する借手の権利制限の立法が困難というなら、(個人的には、いくつかの手法が可能と思うが)、もう一度現時点での影響状況を銀行など個人向け資金供給者や健全な借入ニーズを持つ人たちからきちんとヒアリングをして、すぐにも本体である利息制限法、出資法の見直しを行なうべきではないのか。

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コメント

彼は、以前から、このように経済も知らない、消費者行政もわからないと批判されているのである。

池田信夫先生の旧ブログから

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/77982d9f812ba24990980e6a8a301969

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/f08a7c5619e49366fbce656975298c22

投稿: 品川のよっちゃん | 2010年10月28日 (木) 11時08分

そういう人間だから無責任な法改正も出来た、っていうことです。

改めて、懇談会当時の後藤田発言でも書きましょうかね。

彼は、業界が主張する「厳しい影響予想」については「ファクトを示せ」と門前払い。「弁護士会だけがファクトを示している」と言って市場のごく一部でしかない多重債務者(しかも弁護士に相談して債務整理した人)の事例を市場全体に拡張解釈。
ヤミ金融については「法改正と関係ない、ということで進めます」。
過払最高裁判決には「司法の判断を尊重すべきです」。
GEが欧米事例を出せば「欧米なんか参考にすることはない」。

投稿: kiko | 2010年10月28日 (木) 13時32分

いつも興味深く拝見しております。早速ですが、「過払い金に関する借手の権利制限の立法」がいくつか可能ということですが、なかなか財産権の侵害になりかねないことを立法で解決しようとしても、違憲となりかねず、決め手に欠くような気もしますが、いかがでしょうか。純粋に学問的に興味があります。

投稿: ペンペン | 2010年10月29日 (金) 00時17分

>ベンベン様

そのような質問が来ると思っておりました。

考えられる方法の一つは、現在民法(債権法)改正で論議されたり、金山教授の提案されている時効改正に議論を先取することです。この中で時効の見直し【3.1.3.44】(2)の考えを取り入れ、過払い金についての権利行使可能を知った時から、3年ないし5年で債権時効の満了(消滅時効の完成)とする考え方です。(貸金業者は、該当者に個別に通知する必要があると思いますが)

二つ目が、過払い金は個別の貸金業者の不当利得であるが、振り込め詐欺救済法の如く、国家的に該当者を救済すべきという社会的意義があるとして、現存する貸金業者の資金拠出を条件に、特別立法を行なう方法です。
これにより、債権届出の公告を行ない、債権届出を行なわせ、当該期間内に届け出た者に対して過払い部分の支払を行なわせる。
この期間内に債権届出を行なわなかった場合は、その未届出が「やむをえない事情があった場合」を除き、権利行使をできなくするというものです。(過払金の充当合意を認めないなど判例の適用については、一部排除する必要がありますが)

なお、憲法学者の慶応の小林教授は、Credit Age 9月号において旧金利が当時は有効であったことと行政指導(府令)に過失があったこと、このままでは市場が消滅してしまいかねないこと(マーケットの機能不全が消費者の不利益)を理由に過払い金返還請求を遮断する政策的な立法が可能とされています。

投稿: 品川のよっちゃん | 2010年10月29日 (金) 11時06分

ありがとうございます。振り込め詐欺救済法は、国が没収できる犯罪収益を原資とした救済措置ということでしょうから、一定期間の間に届出が無い場合、国に対する請求権がなくなるという整理もあり得るのではないかと思います。一方過払いについては、そもそも民・民の法律関係の中で、貸金業者が本来債権者に支払わなければならない性質のものということかと思いますので、それを立法措置により、一定期間内に届出がない場合には、失権するという法構成は、なかなかハードルが高いように思います。

投稿: ペンペン | 2010年10月30日 (土) 02時41分

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