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2011年5月11日 (水)

ポピュリズムの怖さを知った立法過程

ビジネス法務5月号から武井一浩弁護士の司会による「日本経済活性化に向けたビジネス法制の提言」が始まった。第1回は五味元金融庁長官である。

12ページにわたる対談で、金融行政の果たすべき役割、リーマンショック以降の金融規制の現状と日本の金融行政の立ち位置など非常にわかりやすい内容から、始まっている。

また、金融行政が規制の副作用にも留意しながら、金融機関のリスクテイクのあり方や投資家や消費者の保護をバランスよくとろうとしている中に、選挙などの政治環境・ポピュリズムから、経済合理性にかける制度、施策が入る問題点を指摘し、世界的な問題点を指摘している。

その中で司法界、裁判所に対して、個別の案件の話ではあるが金融機関の責任判断において「実際のプラクティスと制度趣旨の両方を見ていただきたいこと」金融には「国家意思で法令上の規制がかかっている部分」があり、「経営者がその規制の趣旨に沿った経営をしているかどうかを判断する場合は裁判所の判断が行政の今後の対応やあるいはその業界に属する経営者の経営姿勢をがらっと変える可能性がある」ことを念頭に入れて「業界全体の慣行や行政指導のあり方に」留意して判断してほしいとの注文を出されていることが非常に注目される。

また、政治主導のあり方に関しては、ポピュリズムの怖さを知った例として「貸金業規制法」があげられている。

お金に関する法律は、社会全体に影響が及び、想像もつかないようなところに影響が及ぶものである(いわゆる「副作用」がある)から、「神様になったつもりになってはいけません。」として、謙虚に制度設計し、その道のプロに聞き、「反対だといっている人、あるいは困るといっている人たちをできるだけ早く探し出してそういう人の意見を聞くことが必要」と指摘する。

これは資金需要者の声を代表していたという特定業界や一部の団体、政治家が、実は資金需要者のほんの一部の声しか反映していなかったことを知りながら、政治家と圧力団体に押し切られて立法したことの反省からでた言葉ではなかろうか。武井先生は、これを「歴史の貴重な証言」と述べておられるくらいである。

この法律では、消費者金融や小口事業資金貸付業界を絶滅の危機に陥れることは予想したが、銀行からATM手数料をはじめ、さまざまなフィービジネスの機会を奪うこと、NPOの事業者向け・消費者向け貸付に影響を与え、小口・短期資金を必要とする小規模事業者が資金繰りに窮するなど副作用が大きいことがことが指摘されながらも、無視してできた立法である。その結果、ショッピングカード枠現金化業者の隆盛という予想もしなかった副作用が生じ、その規制問題が新たに発生してる。そして、期待された効果としてかんがえられていた銀行による消費者向け貸付の増加はほとんど見られないという大変残念な結果になっている。

立法担当省庁は、立法提案時にあたって、立法前の課題とそれに対応する法案の効果を評価をするが、その評価の再点検はなされないのだろうか。

少なくとも、施行後に効果の再評価をすべきではないだろうか。政治家が大きく関与した案件としても、所管官庁で貸金業規制法を業法に転換したわけであるし、他の所管業態にも影響を与え、それ以外に副作用があるのだからなおさらである。ましてや、貸金業法は、付則67条で「所要の見直し」規定をおいているからだ。

今度こそ、関連する分野からきちんと意見を聴取して、問題点を整理し、「業法」としてきちんと仕切りなおしすべきではないだろうか。

すでに、「ポピュリズムの怖さを知った」改正法施行から、もうすぐ4年半になろうとしている。

(参考)貸金業規正法改正法施行規則(平成18年12月20日)

第六十七条  (1、2は略)

  政府は、この法律の施行後二年六月を経過した後適当な時期において、この法律による改正後の規定の実施状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとする。

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