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2011年7月15日 (金)

複数の基本契約がある場合の連続性の判断に6要素を考慮しない名古屋高裁判決を差し戻し

私のライフワークとも言える「複数の基本契約がある場合の過払い金の充当関係」に関する最高裁判決が7月14日言い渡された。⇒判決全文

本件の対象となった取引は、

①昭和56年4月10日に基本契約を締結し、昭和58年12月24日まで,

②昭和60年6月25日に基本契約を締結し、昭和61年11月27日まで,

③平成元年1月23日に基本契約を締結し、平成10年4月6日まで,

④平成12年8月7日に基本契約を締結し、平成21年3月9日まで,

という4つの基本契約を締結して、借り入れを行ったが、各期本契約には、2年間の自動継続条項が設けられているものである。

過払い金の計算及び充当について原審の名古屋高裁は、この自動継続条項が存在することを主要な理由として、4つの基本契約に基づく貸付と弁済に付き「取引の一連一体性」を認めた。

しかし、最高裁は各基本契約に「それぞれ約1年6か月,約2年2か月及び約2年4か月の期間があるにもかかわらず,基本契約1ないし3に本件自動継続条項が置かれていることから,これらの期間を考慮することなく,基本契約1ないし4に基づく取引は事実上1個の連続した取引であり,本件過払金充当合意が存在するとしているのであるから,この原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」として、破棄、差し戻しをした。

そもそも複数の基本契約が存在する場合であっても、別々の時期に、別の目的で契約がその時々の合意により結ばれているのだから、同じ当事者間で結ばれた契約といってもそれを1つの契約と考えることは、できない。したがって、当然にそれぞれ別の契約として取り扱われることになっている。

しかし、同じ当事者間では、ひとつの契約にすることもできるのにどうして複数の基本契約があるのか、問題が有ることも考えられる。したがって、例外的に実質的に1つの契約とみなされることも考えられる。その例外が平成8年11月12日のいわゆるリゾート・マンション売買事件の判決である。ご承知の方も多いと思われるが、同一当事者間におけるリゾート・マンションの売買契約とそのマンション内に設置されるスポーツクラブ会員権契約が締結されたが、スポーツクラブ会員権契約が不履行の場合に2つの契約があり、その契約目的が「相互に密接に関連つけられていて、社会通念上、、、契約のいずれかが履行されるだけでは、契約を締結した目的が全体として達成されないと認められる場合には」他方の契約も解除することができるとしたものである。

しかし、過払い金に関しては、そのような契約が存在しないことは明らかであるし、そもそも複数の基本契約は、たとえばAクレジットカード契約とBローンカード契約、C提携カード契約とおのおの別の目的で締結されていることは明らかであるから、平成8年判決のようなことは言えない。金銭借り入れという目的は1つの共通目的であるが、カードの種類ごとに申し込みにいたる動機は異なるし、クレジットカードとしての利用など別の主要目的も存在することからである。

ただ、3つの契約ともに、ローンカード契約の場合で、実質的に継続的に同じような条件で貸し出しが続き、取引関係が継続して来た場合には、最初の契約目的が維持されているように考えられないわけではない。

したがって、平成20年1月18日判決のように、いわゆる6要素を持ち出して、複数基本契約を「事実上1個の連続した取引」と評価できるような場合のみ、個別性の原則をはずすという処理が「過払い金充当」に関してのみ認められたのである。

  (参考) 6要素

  • ①第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さ
  • ②これに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間
  • ③第1の基本契約についての契約書の返還の有無,借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無
  • ④第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況
  • ⑤第2の基本契約が締結されるに至る経緯
  • ⑥第1と第2の基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情

名古屋高裁は、②の点で相当な空白期間があるのに自動継続条項があることを主要な理由として一連計算を認めたが、この6要素による判断がなされていないということで判決が破棄され、差し戻されたのである。

これで自動継続条項があるという、形式的な理由は、一連一体性があるとの判断事由にならないことが明確になった。

今までは、とかく多重債務者救済ということで過払い金債権者有利に解釈する下級審裁判所が目立っていた。しかし、大手中堅貸金業者が多数倒産し、一方一部過払い弁護士の多額報酬問題や脱税問題など請求者側にも問題が散見される。

このような状況を反映しているわけでもないと思うが、最高裁は、あくまでも、原則は「過払い金発生時に充当すべき債務が発生していなければ充当はできない」ということであり、特別な例外である「過払債務の充当合意」は、取引の実態に照らして厳格に判断せよという基本スタンスを明確にしたと評価できるのではないか。

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