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2011年11月 6日 (日)

平成23年10月25日判決と実務対応

先日最高裁平成23年10月25日判決を紹介したが、関連して論稿を書いているときに、下級審ではあるが、なかなか興味深い判決に巡り合った。

 

すでに周知のとおり平成20年に割賦販売法が改正され、35条の313等において「個別信用購入あっせん」[i](与信期間が2月を超えるいわゆるショッピングクレジット。クレジットカードは含まれない)を利用する場合であって原因取引が訪問販売など特定商取引法に規定する通信販売を除く5取引類型で行われたケースに限り、クレジット契約の金額・支払金額、売買契約等の商品の種類、性能、品質、権利と役務の種類、内容、その他購入者の判断に影響を及ぼすことになる重要なもの、商品等の引渡時期等、クーリング・オフ関係事項、その他購入者の判断に影響を及ぼすことになる重要なものについて不実告知、又は故意の不告知があったときに、与信( クレジット)契約の取消を認めるものである。
 そしてこのような法制化がなされたのは、支払い停止の抗弁では、救済されず、事業者であるクレジット会社と消費者の間に著しい不均衡が生じるからであり、これをすでに民法の特別法として制定されている消費者契約法の5条1項に当てはめ、すなわちクレジット取引は、加盟店契約に基づき、クレジット契約の媒介者である販売店が与信契約締結の勧誘を行っている点に着目して、「媒介を委託した者本人」(クレジット会社)が民事上の責任を負って契約の取り消しの対象となると考えることで可能となったという経緯がある(山本豊京都大学教授ほか座談会「割賦販売法の大改正―産業構造審議会割賦販売分科会基本問題小委員会報告を受けて―」『クレジット研究40号』(2008年、クレジット研究所)22~23頁など参照)

 

 しかし、この下級審判決(三重簡裁平成22.1027消費者法ニュース88225頁)は、病気に効果がある水を作る商品の売買契約については、不実告知による取り消しを認めたが、クレジット契約については、販売会社が「媒介を受けた第三者」とは認めず、取り消しを認めなかった。

取消を認めなかったのは、①あらかじめクレジット用紙を販売会社に交付しているが、代理や媒介を委託したことはなかった。②申し込みを受けてからクレジット会社は、電話で商品の購入したこと、契約内容を了解していること、立替払委託契約の申込意思を確認していること、③病気の治療に効果のある旨の説明を受けたことが購入動機であることの申し出がなかったことを認定のうえ、販売業者の尽力によりクレジット会社が原告と契約締結さえ済ませればよいという状態にはなかったと認めたからである。

 

先の最高裁平成23年10月15日判決も加盟店の行為についてクレジット会社の調査義務違反の不法行為による損害賠償請求に対しても、クレジット会社は被上告人に直接クレジット契約の申込意思、内容等を確認していること、本件クレジット契約以前に他の購入者からの苦情の申し出を受けたことはなかったなどの事実関係に照らしてこれを退けている。

 

このように裁判所は、固定的に加盟店を「媒介を受けた第三者」とは考えていないようである。ということは、割賦販売法35条の313等の適用範囲は、これ以上拡大することは原則考えられないのではないかと前記事で考えたのである。

 

つまり、(これは、あくまでも平成20年改正割賦販売法で定められた加盟店契約時の加盟店の営業内容とクレーム内容、過去の行政処分歴等の確認、個別クレジット契約締結時の勧誘内容や方法の調査、苦情の申し出に対する対応と調査、加盟店情報交換制度の適切な利用が行われているという状況であれば、という条件付きであるが)、重要事項の不実告知や告知すべき重要事項についての不告知のときには、クレジット契約も取り消しとなるが、重要でない事項の不実告知や法定事項でない事項の不告知の場合は、取り消しにならないし、問題加盟店との情報がない状況なので、最高裁判例のような公序良俗違反や消費者契約法4条3項の困惑類型のときも取り消しにならないと考えられるのである。

 また、クレジットカード取引には、まったく適用がないということである。

 

 しかしながら、いったん問題が発生すると訴訟対応などで大変である。特に、不良加盟店と断定できないまま取引していた場合には、過払い金の返還という形で経営に大きな痛手を受けることが確実である。クレームが起きた後の対応が一日遅れるごとに、規模の大きな取引先だとそれだけ損失が拡大するからである。

 

「様子を見ながら  」「正式なクレームとは言えない 」など、安易に判断を先のばすことの危険性がここにある。

一方、問題情報がないということで、調査義務を緩和してしまうと、事故が起きたときにかえって拡大適用のほうに道を開いてしまうというもっと危険な状態に陥る危険性も認識しておく必要がある。(特に、後発与信業者やシェアが低い与信業者がこれに陥る可能性が高い。なぜならそれだけ情報が少ないからだ。)

したがって、シェアが低いほど個別契約時の調査を徹底する必要があるほか、加盟店情報交換制度への照会を取扱いが少ないからといって頻度を下げるようなことをしてはならない。そして「重要事項の不実告知や告知すべき重要事項についての不告知」がないかをいかに聞き出すか、創意工夫と丁寧な確認手法が必要であろう。

 

 

 


[i]2月以上かつ3回払い以上のいわゆる割賦要件からの見直しにより、取引の呼称が割賦購入あっせんから改められた。

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