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2011年12月27日 (火)

集団的消費者被害回復訴訟のパブコメ締切まであと一日~「想像力たくましく」

先日もこのブログで「集団的消費者被害回復にかかる訴訟制度」のパブリックについて取り上げたが、個人的にも昨日意見を提出した。

これとは別だが、この間さまざまな業態・業種の法務担当者や企画担当者、及びこれに関連する弁護士の取組状況を聞く機会が数回あった。そのときに感じたことであるが、業種によって本件に対する反応状況がかなり違って、特にリテール業務を直接の業務としない一般のメーカーを中心に、消費財メーカーでも、若手を中心に、割り切った考えに驚いた。

この制度の対象が「消費者契約」の履行に関するものであり、債務不履行や瑕疵担保責任、無効、取消・解除や履行に際し行なわれた不法行為などの請求権に絡むものであるという点がそうさせているのだろう。

しかし、その固定的な感覚は結構問題になる。これは、製造物責任法の流れとは違うのである。また、当然消費者を対象とする特定業種に関する制度でもない。従って、まず自業態・自社にどのような影響があるのか、法改正内容をよく理解し、影響場面の想像力を働かせる必要がある。

そうしないと例えば、利息制限法と出資法の改正で銀行がATM手数料の見直しを余儀なくされ、その他各種フィービジネスにも影響が出たり、割賦販売法の改正のときも銀行の提携ローン政略に大きな影響が出たように、思わぬ大きな火の粉が降りかかってくる。後の祭りである。

ましてや、今回の改正は、業法のレベルではない。たとえば、消費者契約に、労働契約が入らないと決まっているのだろうか?確かに「消費者契約法」では、消費者契約から労働契約は除かれているが、この制度が消費者契約法に盛り込まれるとは決まっていないのである。従って、もし除外されないならば、サービス残業問題なども提訴の対象となる可能性が想像される。

また、前のブログ記事でも触れたが、消費者との契約関係が認められるのであれば、その「付属的義務」の不履行でも対象になるから、金融機関等のように契約で個人情報を集めていなくとも、業務に関して個人情報を収集しているなら、その安全管理等の義務違反の責任を問われることが想像される。さらには、メーカーや提携サービスのインフラを提供している企業など直接消費者と契約していない企業でも、「消費者契約の内容を定めた事業者」や「履行を補助する事業者」などは、消費者と契約を締結した企業の不法行為には責任が生じるわけで、不適切な販売を行なう事業者に商品を供給したり、そのサービスを一部利用させている場合にも、合わせて提訴対象となるが想像されるのである

もちろん、この制度創設を機に、いっせいにあらゆる消費者向けサービスにかかわる関係者のサービス内容、提携関係、子会社の業務内容などを総点検し、問題があれば是正することで最終的には問題が発生しないことが考えられる。

ところが、ここでも想像力が働いていないと通り一遍のチェックで終わってしまう。

この制度が今までの「差止請求」消費者適格団体の場合と大きく異なる点は、「損害賠償請求」が可能になり、これにかかる費用の受け取りとともに「著しく不当」でなければ、高額な報酬を受け取れることができることである。

従って、この報酬目当てに消費者団体が乱立し、濫訴が起きる可能性も想像されるのである。

本制度が目的とする悪質業者からの取り戻しは、実際はほとんど奏功しないだろう。悪質業者は、儲かれば、訴えられる前に廃業したりして、逃げれるからだ。従って、乱立した消費者団体は、逃げられない普通の企業の些細なミスをターゲットにすることは容易に想像できる。

債権法の改正のパブコメのときも感じたが、企業の中堅・若手の法務担当者が法改正に結構淡白な印象を受ける。最近は、企業法務が注目され、法務を学んだ優秀な新入社員が、研修所を卒業したての弁護士とともに、最初から法務部門に配属されることも多くなっている。

今も、現場研修後ではなければ、法務に配属することがない大手メーカー法務部門もあるが、私もこの考えに賛成である。どこの企業も「選択と集中」のなかで、また業務のアンバンドリングの中で、自社の業務が、どこでどのような関係者と共同して成り立っているか、子会社関連会社がどこで、誰と何を行なっているかを知ることは、法務担当者の想像力の源になるからだ。

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