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2012年2月22日 (水)

「資金繰り」の意味を知っているのだろうか?

昨日の日本経済新聞夕刊に「多重債務が半減」という記事が載り、信用情報機関のデータを下に、貸金業者5件以上の借入のある「多重債務者」が2010年4月の112万人をピークに今年1月末には、51万人に半減したことを報じていた。

貸金業法改正で総量規制が導入され、借入額が年収の三分の一に制限されたため、低利で長期返済で借り入れた人も含めて一律に借入制限がかかった。従って、全体の貸付けが抑制され、返済が進んだこと、5件以上借入のある人の借入残高が211万円に減ったことはわかる。

ところが、最後に「ただ、借入が1件ある債務者は1月末で前年より21万人増えており、個人の資金繰りは全体では目だって改善していない」と結んでいることに違和感を感じた。

この記事を書いた人によれば、改正貸金業法で「借入を整理する動きが進んでいる」ことは歓迎すべきであり、それは5件以上借り入れている人にとってはもちろん、1件の借入の人にとっても当然当てはまると考えておられるようだ。つまりこの根底にあるのは、「お金は借りないほうがいい」という考えであろう。私も、原則的にはそう思う。

しかし、現実には、給料日直前に親戚や友人の結婚式があって祝儀を包む必要性ができたり、怪我や歯の治療などで急な出費が発生したりする。また4月から5月は、自動車税その他の地方税がぱらぱらと請求が来たりして、単月の給料ではやりくりできないようなときも発生するのである。

そのような支出の発生と手許現金のミスマッチがあれば、どこからか現金を調達する必要がある。資金繰りとは、通常、予定される支払と入金の時期的なずれを解消するために、借入等を行なって、不払いを起こさないようにすることをいう。 企業の場合、いくら資産があって、利益を出していても、支払に回すお金が用意できなければ、手形の不渡りや買掛金の債務不履行により、信用を失って倒産するので、資金繰り=借入などの資金調達は極めて重要である。

もちろん、企業が資金繰りを改善させる方法として、借入以外に、①売掛金の管理をきちんと行い、回収サイクルを早めるなど収入面からのアプローチ、②仕入れ債務の支払サイトを延長したり、受け入れ手形の裏書で対応するなど支出面からのアプローチ、③在庫を持たない、高利益商品に絞る、など利益面・営業面からのアプローチ ④節税やリストラ、リスケなど様々な方法がある。

これを給与所得者である個人に当てはめると①給与の前払いを受ける②支払を待ってもらう。③副業を開始する④家賃の安いところに引っ越す他無駄な出費を抑えるといったところだろうか。

企業では、借入以外の資金繰り対策を実行しても、従業員や取引先もあり、完全には改善できない場合が多い。個人の場合は、もっと難しい。例えば、甥・姪の結婚式のご祝儀代の不足対応として、上に上げた①から④の対応策を実行し、すぐに乗り切れるだろうか?

近い将来ボーナスの支払を受ける予定があり、学資保険や生命保険の返戻金など資産を有していても、ほとんどのケースで、短期的な「資金の借入」を行なうことが選択されるのでなかろうか。つまり、個人としては借入は、迅速な点で、有力な「資金繰り」手段なのである。ここでは、短期小口の資金ニーズをあげたが、高額なニーズもある。自分の例で恐縮だが、父が正月に亡くなったので、九州まで家族5人で翌日飛行機で帰った。正月なので、交通費だけで40万円。これに花輪代、ホテル代、その後の法事での帰省費用など結局年末の一周忌まで100万円弱の出費である。これが子供がみんな学校に行っている頃に生じていたら、資金繰りに大変だったと思う。

人生には、いろいろなことが起きる。みんな高収入で、余裕のある生活であるとは限らない。そのような世の中で、信用情報機関のデータとして現れた貸付け人数や貸付残高の増加は、少なくとも個人の借入ニーズが旺盛であり、これに対応した貸付けが行なわれているということをあらわしているのではないか。

この状態について、1件しか借入のない個人について、「資金繰りは改善していない」とは、他に一体どういうデータがあっての、コメントなのだろうか。

(追伸)2月22日

読売新聞が総量規制により、正規貸金業者から借りられなくなって、ヤミ金から借り入れる人が増加していると、大阪府の調査結果を紹介している。→これ

貸金業者の利用者は、生活費を穴埋めする主婦や、当座の運転資金を確保したい中小企業の経営者など様々。同課の楠本成樹参事は改正貸金業法について、上限金利の引き下げや借り過ぎを防ぐ総量規制の効果を評価しつつも、「一律の規制で返済余力のある『借りればよくなる層』まで苦しめてしまっている可能性がある。さらに、適正な貸金業者が減り、ヤミ金業者が暗躍する土壌ができる」と懸念している。

このように「借りればよくなる層」の資金繰りが悪化しているのである。

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