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2014年3月30日 (日)

「困ったことになった」と思う人が多いと思われる最高裁判決

表題通り、頭を抱えるコンプラ関係に携わる企業実務家を想像してしまった最高裁の平成26年3月28日判決  → 最高裁のサイト

この判決は、暴力団排除を主導してきた警察関係者、企業関係だけでなく、民暴対応を指導されている弁護士の先生、行政の関係者も、今までの指導や監督に関連していろいろ悩まれることになるのではないか。

原審では、暴力団員が、「暴力団員の利用お断り」などと掲示し、「ゴルフ場利用規則」において暴力団の利用を禁止していたが、暴力団員が実名を記入して、利用申し込みをして、従業員をして、暴力団員ではないと誤信させて、利用契約を締結し、施設を利用したことによって、人を欺いて財産上不法の利益を得たとして、詐欺罪の成立を認めていたが、最高裁は、「受付表に暴力団関係者であるか否かを確認する欄はなく,その他暴力団関係者でないことを誓約させる措置は講じられていなかったし、暴力団関係者でないかを従業員が確認したり,被告人らが自ら暴力団関係者でない旨虚偽の申出をしたりすることもなかった。」、「同倶楽部の施設を利用した後,それぞれ自己の利用料金等を支払った」「暴力団関係者の施設利用を拒絶する旨の立看板等を設置している周辺のゴルフ場において,暴力団関係者の施設利用を許可,黙認する例が多数あり,被告人らも同様の経験をしていたというのであって,本件当時,警察等の指導を受けて行われていた暴力団排除活動が徹底されていたわけではない。」などの状況に照らし、「一般の利用客と同様に,氏名を含む所定事項を偽りなく記入した「ビジター受付表」等をフロント係の従業員に提出して施設利用を申し込む行為自体は」「申込者が当然に暴力団関係者でないことまで表しているとは認められない」として、「施設利用申込み行為は,詐欺罪にいう人を欺く行為には当たらない」として詐欺罪の成立を認めなかったものである。

現在、「暴力団排除条項」を導入している民間企業は、この条項をもとに、詐欺として被害届を提出するなどの協力を行ってきた。今回の判決をベースに実務を考えると、約款に、「暴力団排除条項」があるだけではだめで、積極的に「暴力団員でないこと」を誓約させるための確認欄を設けるなどして、従業員をして積極的に「確認すること」が必要になる。

すでに一部の銀行では、取引の申し込みの署名と捺印に加えて、暴力団員等反社会的勢力でない旨の誓約の署名と捺印を徴求している例はある。単発の取引なら、今後対応することができよう。

しかし、継続取引過去の取引については、約款に追加し、取引継続の場合に、その約款の変更内容を承諾したとの扱いがなされている。そうすると今回の判決に照らすと、その有効性に大いに疑義が生じる。預金取引やクレジットカード取引のように、「暴力団排除条項」導入以前から存在する各金融機関の有する数千万件の取引について問題となる。

あらたに、一人一人に、、「暴力団排除条項」を示し、「誓約」を再取得となるととんでもないコストになることは明白だし、提出しない者も多数に上るであろう。また、相当数のクレームも想定される。

そもそも、約款に、「暴力団排除条項」を挿入することでよいと指導されていた企業も多いことだろう。

所管官庁や弁護士の指導に基づき、継続的契約に、「暴力団排除条項」を導入し、「契約解除」や「期限の利益喪失」事由として、該当者に対して契約を解除すると社内規定等で定めていた企業は、どう対応すべきなのか。

また単発の取引であって、申込書の裏面に、「暴力団排除条項」を導入している取引であっても、申込書の表面には、暴力団員でないことの誓約の署名や従業員等が確認を行っていなかったものは多いと思われる。そうすると、警察や、監督官庁、弁護士などから、該当者であるから、解約等を行い、応じなければ訴訟を行うよう指導されていた案件は、企業側として一転苦しい立場に置かれる可能性が高い。(判決は未確認であるが、民事訴訟で、今回の最高裁判決同様、約款に記載しただけで、申し込み時に反社勢力でない旨の誓約を確認していない例で解約を認めなかった例があると聞く)(注)。万一敗訴すると、損害賠償の問題も生じかねない。これは、ゆゆしき問題であり、企業側は完全に「はしごを外された」状態に陥る。

(注) 平成26年4月7日判決では、約款に暴力団排除条項を記載していた場合に、一前目の名前の欄のそばに、「反社でないこと」の記載があって、局員が該当条文を示して説明した場合に、詐欺罪の成立を認めている。第一審も同様だったようだ。したがって、この括弧下記の内容は不正確な情報であった。(平成26年4月10日追記)

反社データベースの充実が図られている現在、事後調査により反社勢力該当者が判明することは今後増加が見込まれる。しかし、判明しても、偽名などを使っていない以上、過去の分の解約や期限の利益喪失請求は、申し込み時の状況などを確認するなど極めて慎重に行わなければならないことになった。

したがって、今後は事前排除がさらに重要になってくるが、反社データベースは、かなりの部分が「生年月日」という極めて重要な識別情報が欠けている例が多いと聞く。また、カタカナ名も多数含まれているようだ。したがって、過去のデータでは、現在の住所を調査することはできないため、判定は、極めて慎重に行う必要がある。

そうすると、反社排除を徹底するあまり、不正確なデータで排除するケースが今後多くなるのではないかと考えられる。反社勢力と「読みが同じ」「年齢が近い」「同姓で、同じマンションに住んでいた」などにより、契約から、理由もなく排除される人が増加する可能性がある。

しかし、類似情報で契約排除するなと言われても、政府や所管官庁は、反社会的勢力の定義やデータベースの構築を民間任せにしたままであり、暴力団追放センターのデータ正確性は担保されていない状態で、ミスなく対応するにはおのずと限界がある。

反社会的勢力の排除を本当に推進していくなら、法律で正確な情報を企業等に提供するインフラを整備するしかない。

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