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2015年2月17日 (火)

多数当事者型クレジットカード取引における加盟店調査義務の主体

本日産業構造審議会商務流通情報分科会の第8回割賦販売小委員会が開催された。昨年末の第7回会議で取りまとめた「中間的な論点整理」についてパブリックコメント手続きをとって、最初の開催である。

パブコメとして出された意見は、143名(個人81名、法人・団体62社)で井件数は391件とかなり多かった。パブコメによる「中間的な論点整理」の修正は行われず、これらの意見を踏まえて今後の議論が再開された。

本日のメインテーマは、表題のとおり、誰が加盟店調査に責任を持つ主体とし、どのような義務を課すのかということであった。

事務局からは、

A案として、加盟店への実質的な影響力という観点から、アクワイアラーとPSPに区別を設けず、「加盟店に立替金を交付する者」について登録義務を課し、加盟店調査等の義務主体と位置づける。

B案として、国際ブランドからライセンスの供与を受けたアクワイアラーに登録制を導入し、加盟店調査等の義務主体と位置づけるとともに、PSP等のうち加盟店の調査是正を行う能力のある者をアクワイアラーが有効活用できるよう、「加盟店業務代行者」として任意的登録制を導入する。

の二つの提案があった。(案の内容を一部省略している点に留意されたし)

この提案に対し、消費者サイドは主にA案賛成であった。今までの議論を踏まえるとそうなるのが、自然かなと思える。何より、加盟店に立替金を交付する者をみな包括的に対象として登録義務を課すので、消費者の苦情を申し出る先が明確になるのであるから。

これに対しては、加盟店に立替金を交付する者には、モール事業者やデパートその他幅広く該当して過剰な規制につながるなどの反対があったのは当然であり、事業者だけでなく、学者などもB案にいろいろな問題点、懸念を示しつつ、(条件付の)賛成が多かったように感じた。任意的な登録制度は、現在も消費者庁が実施しているが、効果がないとの意見もあったが、今回は、カード会社を経由した法的裏づけのある制度なので、消費者庁の制度よりは、いいとは思われる。

しかし、果たしてこれでインターネット取引で、「いわゆるさくらサイトの疑いが強いメール交換サイトや模倣品販売等、違法性が強いないし違法性のある取引」(「中間的論点整理」7P)を行う加盟店を排除することができるのであろうか?自信を持って、NOといえる。

2名の委員からも、詳細な対案ではないが、C案を検討すべきとの意見が出されたが、私もこれに(具体的なC案が提示されてはいないが)賛成である。

なぜ、AB両案が問題解決に資することがないかというと、排除されるべき悪質加盟店からみた視点と利用者から見た視点で、まったく機能しないからである。

まず、「違法性が強いないし違法性のある取引」を行う者が、国内事業者に限定して考えられている点に問題がある。海外から日本のリテラシイーの低い消費者向けに「違法性が強いないし違法性のある取引」で設けようという事業者には、A案では、登録という形で捕捉することはできない。B案でも、海外のアクワイアラーに、チャージバック以外の事由で、日本の会員向けのみを別途管理を要請することは、無理であろう。

国内の悪質業者も、そうなれば、海外に拠点を移し、またはペーパーカンパニーなどを経由して海外のアクワイアラーと提携することが、今以上に増えてしまうことは想像に難くない。そうすると、現在国内アクワイアラーで対応できていたことまで対応できなくなるのではないか。

次に、利用者の問題である。利用者は、カードが利用できるかどうかは、現在は国際ブランドのマークの有無のみにより判定しており、アクワイアラーが誰かについての注意をする必要はない。それ以上に、決済代行業者(PSP)については、さらに無関心である。要は、自分が代金決済義務を負う販売店で、自分が保有するカードが使用できて決済が完了するかどうかのみが関心事なのである。

このような顧客は、カードが使えなければ、コンビニ収納や銀行振り込みを選択するし、第引きを利用することもあるであろう。何がいいたいかといえば、仮に、加盟店調査義務を有する主体が拡大したとしても、「違法性が強いないし違法性のある取引」の決済は、ほかの決済手段に移るしかないのではないかということである。

カード取引から、「違法性が強いないし違法性のある取引」を排除したとしても、リテラシーの低い消費者は、他の手段でその取引をやってしまうのではないか。例は適当ではないかもしれないが、「振り込め詐欺」と比較してみよう。その名のとおり、「振り込め詐欺」は、相手方から銀行振り込みという送金手段を利用して、現金を詐取していた。しかし、官民上げたの取り組み、銀行の協力で「振込み」を使った詐取は激減している。2014年の警察庁の発表では、「振込み型」は、107億円(前年比-億円)だが、レターパックや宅配便を使う「送付型」は、221億円(+88億円)、「手渡し型」が236億円(-6億円)と、既に他の方法が4.5倍にも上っているのである。

つまり、根本的原因は、消費者をだます悪いやつらがいることであり、その最大の対策は、消費者が「だまされないようにすること」「うそを見抜くこと」ではないのか。

インターネット取引で、「いわゆるさくらサイトの疑いが強いメール交換サイトや模倣品販売等、違法性が強いないし違法性のある取引」が、正常な取引にまぎれているのかもしれないが、通常のリテラシーがあれば、見ず知らずの人から、いきなり「あってください」「お金差し上げます」「私は、有名タレントのマネージャーです」などという文面からしておかしいと感じるでしょう。また、有名ブランド品をアウトレットでも売っていないような割引価格で販売するわけがない、怪しいと思うでしょう。

このような最低限のリテラシーを教育することこそが、根本的、かつ、最高の効果のある対策になるのではないか。

私のC案は、カード会員の教育の徹底である。被害にあっている会員は、インターネット取引で、「いわゆるさくらサイトの疑いが強いメール交換サイトや模倣品販売等、違法性が強いないし違法性のある取引」をしているのだから、インターネット環境がある。

したがって、カード更新時などに、Eラーニングシステムを利用した「カード教育」(動画を使ったカードの利用法、会員規約の説明、利用上の注意などを教え、その後理解度測定をおこなうなど)を行い、きちんと理解したものに、カードを交付する(カードをアクティブにする)くらいやってもいいのではないか。また、カードを紛失した後の再発行時などは、改めての注意喚起の動画やカード保有者の責任についてのチェックを受けることを義務つけることなどが考えられる。

コストはかかるが、官庁の予算をつけ、カード会社と消費者団体が一緒になって取り組むべきことではないのか。

もちろん、カードを持つ前の、中学生、高校生のころからの消費者教育、カード利用教育、インターネット利用教育も、組み合わせる必要があるが。

2015年2月22日追記

今回のA案、B案は、加盟店調査義務の主体、すなわちどこまで法規制に取り込むべきかの案であり、どう規制するかは、まだ一部しか出されていないので今の時点で違いについてのコメントとしては、いかがなものかとのご意見もいただきました。

確かにその通りです。ただ、少なくとも、A案は、よほどうまく切り出さない限り、その規制が問題がない業者にも及びつつ、課題であるネット取引の面では、ボーダーレスなので、効果が及ばないことが考えられます。そこをアクワイアラーへの規制を行いつつ、国際ブランドの協力を取り付けることで対応することが予想されるB案があるわけですが、我が国のカード会社が、国際ブランドに対して一定の力(理事等)を持っていた昔ならいざ知らず、アジア内での地位が低下している現在、どう対応してくれるのか、疑問があるところです。

問題となっているのは、ボーダーレス取引が中心ですから、アジア統括の国際ブランドとそのアクワイアラーの協力が必要だからです。

しかし、我が国のクレジット市場は、「消費者信用統計の大幅修正ショック」で10兆円以上の市場が幻だったことも判明しており、アジア各国から見たらどうなのでしょう。詐欺。商品未納など、チャージバックで解決できる部分はともかく、苦情の内容を理解してもらえるでしょうか。

また、今後は、急速に国際ブランドとしての地位を高め、すでにJCBの数倍の規模になっている銀聯のことも考慮を入れないといけません。銀聯ブランドの日本国内でのカード発行は、すでに中国銀行東京支店、中国工商銀行だけでなく、我が国カード会社数社が行っており、今後の拡大予想されますので、仮にvisa masterから一定の協力が得られたとしても、銀聯の協力が得られなければ、いずれ同じ問題が生じるのではないではないか。

など、いろいろ考えてしまいます。改めて、ボーダーレス取引にも実効性のある案を検討する必要があります。

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