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2015年5月の2件の記事

2015年5月17日 (日)

消費者庁の消費者被害・トラブル額の6兆円推計に違和感

消費者庁の平成26年版消費者白書を見た。というのは、消費者委員会で今年の3月5日から「特定商取引法専門調査会」が開催されており、その第1回目の資料として提出された資料2「特定商取引をめぐる環境変化」の中に消費者被害トラブルの額として、約6兆円あり、GDP比で約1.2%に上るということが記載してあったからである。→ 消費者白書平成26年版資料はこちら(149~151頁をご覧ください)

推計の方法は、

消費者被害・トラブル額は単純化すると「消費者被害等の総数」×「消費者被害等1件当たりの平均金額」で求めることができるため、まず全国の満15歳以上から無作為抽出して意識調査を行い消費者被害等の「発生確率」
を求めた上で消費者被害等の総数を推計し、これに相談情報(PIO-NET情報)から計算される平均金額を乗じ、所要の補正を行って推計値を算出するという手法を採っています。

と記載されている。

白書においても、「必ずしも十分な精度が期待できるものではありません」との記載があるが、長期的には消費者行政の成果を測定するうえで有効な指標となる旨の記載があり、今後は、消費者行政の在り方に重要な影響を与える指標となっていくことが考えられる。

しかし、この数字をこのまま信じていいのだろうか? GDPの1.2%って、すごく大きな数字ではないか。

そのような私の疑問に応えるかのように白書には英国とオーストラリアの数値が参考値として掲載されている(151頁の図表4-1-33の下段)。これによれば、英国は、GDP対比約0.2%の30億8千ポンド、オーストラリアは、142.2億ドルGDP対比約1.0%の消費者被害があるという。

確かに、オーストラリアと比べると日本の数字もあまりおかしくないが、なんでほぼ同じ法制度をとっているオーストラリアが、英国の5倍もあるのか?不思議だなと思って、引用されている『Australian Consumer Servey 2011』にあたってみた。

該当箇所と思しきところ(ファイルの12ページ)

It is estimated that it costs Australian consumers a total of $14.2 billion a year to deal with consumer problems, based on the direct costs they incur and the time they spend dealing with problems.
Consumer respondents who took some form of action to resolve their most recent problem were asked to estimate the direct cost incurred.
These costs include things like paying for repairs or replacement products, telephone and postal costs, travel and petrol costs, legal costs and any other out of pocket expenses.
They were also asked to quantify the time they spent dealing with their problem.
The incidence of consumer problems reported in this Survey has been extrapolated to the total Australian population and multiplied by the average costs reported to provide a total estimate of time and money spent dealing with problems.
It is estimated that it costs Australian consumers $14.2 billion each year to deal with consumer problems.

簡単に要約すると消費者が要した直接費用にトラブルの発生率をかけて、オーストラリアの人口に基づく計算をしていますので、消費者白書と同じ計算ロジックのように見えます。しかし、決定的に違うのは、この費用は、問題解決に要した費用であり、修理または交換製品、電話、郵便費用、出向いた費用やガソリン費、訴訟費用およびその他の支払いとして消費者が支出した費用が含まれています。具体的なコスト計算は、68頁(ファイルの86頁)に記載されており、その合計が14.22billionとされています。

したがって、この数値を被害額としてGDPの比較の対象とするには、不適切ではないだろうか?

もう一つの英国のconsumer detriment 2012のほうは、原典ではなく、消費者庁の資料が見つかった。→ 消費者庁資料

なお、この資料によると、、我が国の推計とほぼ同様な方法で推計されており、英国の2008年の調査では66億2千万ポンドの被害があり、2012年には30億8千万ポンドに半減していることが判る。(その理由が知りたいところである。)

我が国とほぼ同様な調査で、英国では、GDP対比2008年で約0.4%  2012年で約0.2%ということであるから、我が国の推計による被害額は、イギリスの3倍から6倍という大きなものになる。下記の参考にも書いているが、オーストラリアと比較しても3倍以上である。我が国は、他国と比較してそんなにひどい状況なのだろうか?

消費者被害6兆円という数字が独り歩り歩きしないうちに、検証していただきたいものである。

(5月17日23時追記)

このように違和感を感じるのが、発生確率が、人単位になっていることと平均被害額の設定にあると考える。13人に1人(というのは、いかにも多すぎるのではないかという点にある。

まず、発生確率から、見てみよう。
手元にある2013年消費生活年報2013年版と日本の消費者統計から導ける消費者相談の発生率は、平均単価が1万円前後と低いクレジットカードは、マンスリークリアが平成24年dp25億9388万件の取引に対して、消費者相談件数は、22,063件で発生率は、0.00085%、支払期間が2月以上の包括方式で1億1797万件で118,645件で0.01581%に過ぎない。低単価のため、相談が少ない可能性があるが、仮に100倍あったとしても、発生率はやっと1.5%になる。件数でなく人で見ると、20歳以上の人口が1億800万として、約8割がクレジットカードを保有するといわれているので、8000万人で2つの相談件数を合算したものを割ってみても、0.175%に過ぎない。
これに対して、問題商法が多かったとされる個別クレジットについては、平均単価は約150万円と消費者相談の平均購入額128万円(2013年)とほぼ同じ(個別クレジットの場合、分割払い手数料が加わっているため)であるが、148万件の取引に対して、消費者相談は20,616件で発生率1.39562%となる。

契約額がほぼ等しい個別クレジットの場合と比較しても、5倍以上の発生確率となっているが、クレジット取引の問題点が強調される中、現金取引でその5倍以上あるというのは、にわかに信じられない。

次に、既払い額=被害額が2013年54万円となっている点である。推計に当たっては、単純にこの額が用いられているわけではないが、クレジット取引で見たように、購入額が高いほど消費者相談の発生率は高いのであり、アンケート調査では、購入額が小さいものの、不満を持っている消費者も回答していることをもっと考慮すべきではないだろうか。今後は、不満がある取引の価格帯、被害額を回答してもらう形に変えて精度を高める必要があるのではないか。(以上追記終わり)

(参考)
ところでこの資料には、なんとオーストラリアの先の資料の内容も記載してある。ここでも、被害額として、直接費用56億ドルとして、紹介している。これだけをGDP対比でみると0.38%になる。
しかし、この直接費用(消費者庁の言う被害額)は、質問内容を見るとどうしても、我が国とは、内容が違うことが明らかですが、、、。しかも、「過去2年間」の被害をたずねているし、。。

(質問内容と翻訳を消費者庁の資料から引用)

④設問の内容
a.被害の有無
Thinking about all the products and services you have purchased in last two years,have you experienced any problems in any of the following ategories?This might include times when you believe you were misled or exploited by a business or wen you purchased a product that was faulty or did not operate how you expected it to or purchased a service that did not deliver what you expected it to.
「過去2 年の間に購入した商品・サービスで、不良品や、期待どおりに提供されなかった
サービス、行われなかったデリバリー等の経験はありますか」
b.被害額
Approximately how much money have you spent trying to resolve this problem?We would like you to consider all direct costs not including the cost of your time spent dealing with the problem this could include things such as paying for repairs or replacement products, telephone and postal costs, travel and patrol costs, leagal costs and any other out of pocket expenses.
「(生じた)問題を解決するために、だいたいいくらぐらいのお金がかかりましたか?直接的にかかった費用についてご回答ください。修理代や商品の入れ替え費用、電話代や郵送費、旅費・ガソリン代、法的費用や現金支出費などを含みます。なお、この問題解決にかかった時間は含みません」

(引用終わり)
被害の意味が違いますよね。

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2015年5月 1日 (金)

登録貸金業者の減少が依然として止まらないが、その先は?

個人情報保護法の見直し関係を書こうと思っているが、他の原稿等もあるなど諸事情で停止中です。

そこで、久しぶりに貸金業界のお話。
金融庁から恒例の貸金業者推移表(平成27年3月末現在)が公表されたが、いよいよ業者数が2000社を割る寸前まで減少している。→ こちら

財務局登録貸金業者数は、新規登録が散見される一方、廃業がこれを上回り、昨年1年間で3社減少し、ついに300社を割れて299社となっている。
一方、都道府県知事登録貸金業者は、100社近く減少し1,712社となっている。合計で2,011社と平成20年4月末の約4分の1、ピークの昭和61年のなんと4.23%の規模に縮小してしまっている。
いまさらながらであるが、登録回数10回、11回の貸金業者、すなわち、貸金業規制法ができてすぐに登録した営業歴30年前後の貸金業者が昨年23社、今年15社廃業しているのが、現在の貸金業界のおかれた環境を物語っている。

ファイナンス関係の新規事業を行おうとする企業も多く、時々相談にのることがあるが、規制内容の厳しさ(特に業務規制における記録等の義務など)、貸金業務取扱主任者資格試験の難しさに、「小さく生んで、大きく育てよう」としている起業家が躊躇し、貸金業法の規制のない方法でのビジネスモデルの構築に苦慮することを目にしてきた。

一方で、わずかずつではあるが、貸金業法の適用のない銀行等の金融機関の個人向けローンの残高が上向いてきている。24~5年の個人向けローン(住宅ローンを除く)残高減少後のわずかな上昇ではあるが、喜ばしいことである。
しかし、その上昇の一部には、貸金業者大手数社の金融機関向け個人ローンの保証業務の取組みの積極化が寄与していると考えられ、手放しで喜べるものではない。

現在の異常な低金利であるから、保証会社のリスク(それなりの保証料)で金融機関も個人向けに、ほとんどリスクなしに貸し付けて収益を得ているが、インフレ目標を超えるインフレ率になったときには、どうなるのだろう。
金利上昇率を織り込んで、保証料を見込むと、現在の利息制限法・出資法における利息と保証料の合算、みなし利息を加えるとかなり上限に抵触する事態も考えられる。
そうすると、さらにリスクの低い人向けにしか資金は提供されなくなる。
一方その頃には、どれだけの貸金業者が残存しており、金融機関から資金調達できない人にどれだけ資金を供給できる状況にあるのだろうか。

すぐに起きる事態ではないが、当然想定しておくべきことである。

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