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2017年2月22日 (水)

平成29年2月21日最高裁判決(名義貸事件と取消しが認められる条件)

平成29221日呉服名義貸しに関する最高裁第三法廷判決が出された。

222日付の日経新聞38面には、早速「名義した客 支払免除」 「クレジット契約 業者説明虚偽なら 最高裁判所初判断」との記事が出ている。

しかし、ややミスリードではないのか? (長文注意)

判決内容を一言で言うと、「不正な取引である名義貸しの契約でも販売店に利用されたと評価されるときには、不正契約者でも、保護されないとはいえない。ただし、その抗弁が信義則に反しないことが必要である。」というものである。

立替払契約の名義貸しと呼ばれるものには、①販売店の資金調達等の目的を知って協力するもの、②名義借り人から頼まれて、販売店関与なしに行われるもの、③販売店との雇用関係などにより協力するもの、④販売店からの協力要請に応じて行われるもの⑤名義貸しの認識の薄いまま、販売店の主導により「名義冒用」に近い形で行われるもの など様々なものが考えられる。また、立替払契約の前提として売買契約や役務提供契約が存在することになるが、ⅰ)売買契約等が真実の名義人との間に存在する場合、ⅱ)売買契約等も名義貸しの場合、ⅲ)売買契約等が架空契約の場合の3通りが考えられる。

今回の事件の判決は、④でⅲ)であるケースのものと考えられる。

いままでも、⑤のケースにおいて名義貸人の責任がないと判断されることは多かったが、今回④のケースでも、「保護に値しないということはできない」と指摘しただけであり、業者の説明のうそについては、契約締結の動機に関する重要事項と認定され、かつ、それを誤認して契約を締結したこと、抗弁に関しては、無効との主張につき、信義則に反しないことが必要とされており、無条件に、契約の取消しを認めたものではない。

したがって、「告知の内容についての改正後契約に係る上告人らの誤認の有無及び改正前契約に係る上告人らが名義貸しに応じた動機やその経緯を前提にしてもなお改正前契約に係る売買契約の無効をもって被上告人に対抗することが信義則に反するか否か等につき更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。」とされたのである

 

しかしながら、本判決は、割賦販売法の解釈と適用を誤った不当な判決と考えられるので、確認してみよう。

判決では、まず、

「立替払契約が購入者の承諾の下で名義貸しという不正な方法によって締結されたものであったとしても、それが販売業者の依頼に基づくものであり、その依頼の際、契約締結を必要とする事情、契約締結により購入者が実質的に負うこととなるリスクの有無、契約締結によりあっせん業者に実質的な損害が生じる可能性の有無等、契約締結の動機に関する重要な事項について、販売業者による不実告知があった場合には、これによって購入者に誤認が生じ、その結果立替払契約が締結される可能性がある。このような過程で立替払契約が締結されたときは、購入者は販売業者に利用されたとも評価し得るものであり、購入者として保護に値しないということはできないということはできないから,割賦販売法35条の3の13第1項6号に掲げる事項につき不実告知があったとして立替払契約の申込みの意思表示を取り消すことを認めても,同号の趣旨に反するものとはいえない。」としている(下線は筆者)。

 

これに対しては、改正の趣旨を拡大解釈しすぎているのではないかとの批判は免れられないのではないか。

 

訪問販売した商品のクレジット契約の取消権の創設に関しては、判決文の指摘するように、「改正法により新設された割賦販売法35条の31316号は,あっせん業者が加盟店である販売業者に立替払契約の勧誘や申込書面の取次ぎ等の媒介行為を行わせるなど,あっせん業者と販売業者との間に密接な関係があることに着目し,特に訪問販売においては,販売業者の不当な勧誘行為により購入者の契約締結に向けた意思表示に瑕疵が生じやすいことから,購入者保護を徹底させる趣旨で,訪問販売によって売買契約が締結された個別信用購入あっせんについては,消費者契約法4条及び5条の特則として,販売業者が立替払契約の締結について勧誘をするに際し,契約締結の動機に関するものを含め,立替払契約又は売買契約に関する事項であって購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについて不実告知をした場合には,あっせん業者がこれを認識していたか否か,認識できたか否かを問わず,購入者は,あっせん業者との間の立替払契約の申込みの意思表示を取り消すことができることを新たに認めたものと解される。」(下線は筆者)にもかかわらず、「名義貸しという不正な方法によって締結されたものであったとしても、(中略)取り消すことを認めても,同号の趣旨に反するものとはいえない」なのか。

 

まず、拡張解釈が過ぎる点の第一として、

 本件は割賦販売法35条の31316号の保護の対象となる「訪問販売」なのか、という点である。

認定事実によれば、「ローンを組めない高齢者等の人助けのための契約締結であり,上記高齢者等との売買契約や商品の引渡しは実在することを告げた上で,「支払については責任をもってうちが支払うから,絶対に迷惑は掛けない。」などと告げて」立替払契約を締結したというものである。

そうすると、「高齢者等との売買契約や商品の引渡しは実在することを告げた」としている点から、高齢者との売買契約についてまで、上告人らは名義を貸したという認定はしていないといえる。真実の売買契約は、高齢者との間に存在することを販売店が告げており、上告人らは、その売買契約の名義貸しを承諾したのではなく、立替払契約について、販売店が「支払については責任をもってうちが支払うから,絶対に迷惑は掛けない。」などと告げたのを信じて、立替払契約を締結したことになる。

仮に、売買契約にも、名義を貸したということであったとしても、自己に商品等の引き渡すことを目的とした契約ではなく、人助けの目的であることが、販売店との間で特約された契約に過ぎないから、特定商取引法211号及び2号に規定する訪問販売ではないのではないか。

 

 1号「販売業者又は役務の提供の事業を営む者(以下「役務提供事業者」という。)が営業所、代理店その他の主務省令で定める場所(以下「営業所等」という。)以外の場所において、売買契約の申込みを受け、若しくは売買契約を締結して行う商品若しくは指定権利の販売又は役務を有償で提供する契約(以下「役務提供契約」という。)の申込みを受け、若しくは役務提供契約を締結して行う役務の提供

2号「販売業者又は役務提供事業者が、営業所等において、営業所等以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させた者その他政令で定める方法により誘引した者 (以下「特定顧客」という。)から売買契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と売買契約を締結して行う商品若しくは指定権利の販売又は特定顧客から役務提 供契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と役務提供契約を締結して行う役務の提供」

 

②本件は割賦販売法35条の31316号の適用のある「個別信用購入あっせん契約なのか」という点である。

立替払契約は、立替払契約の契約者が販売店に対して負担する売買契約等の債務について、後日返済することを約して、立替払をクレジット会社に委託する契約である。

そうすると、実在する高齢者との売買契約とはまったく別に、存在もしない売買契約(債務は存在しない)にもかかわらず、上告人の債務負担があるとして、クレジット会社に立替払を委託したことにならないか。

 そうであれば、この立替払契約は、商品等の販売や役務の提供を条件とするという割賦販売法の適用のある「個別信用購入あっせん」の定義*に該当しない契約になるのではないか。

 

*割賦販売法24項「個別信用購入あっせん」とは、カード等を利用することなく、①特定の販売業者が行う購入者への商品若しくは指定権利の販売又は特定の役務提供事業者が行う役務の提供を受ける者への役務の提供を条件として、当該商品若しくは当該指定権利の代金又は当該役務の対価の全部又は一部に相当する金額の当該販売業者又は当該役務提供事業者への交付(当該販売業者又は当該役務提供事業者以外の者を通じた当該販売業者又は当該役務提供事業者への交付を含む。)をするととも に、当該購入者又は当該役務の提供を受ける者からあらかじめ定められた時期までに当該金額を受領することをいう。

本件では、立替払契約の名義貸しとの前提で検討されているが、ここでいう立替払契約は、最初から債権債務関係を発生させる意図のない契約を原因とするクレジット会社から資金引き出しを目的としたものであり、そもそも、割賦販売法の適用対象とする立替払契約の形式だけを借用したものであるのに、割賦販売法を適用し、保護の範囲内とする点に大きな違和感を覚えざるを得ない。

 

③購入者保護から逸脱した不正契約者の保護になっていないか。

割賦販売法は、立替払する原因取引は、加盟店である販売店と購入者等との間の売買契約や役務提供契約のように、契約者が販売店に対して支払義務のある債務について立替払いを委託するものである。

認定内容でも、不正な取引である名義貸し行為すなわち、ローンを組めない高齢者に商品を販売した販売店の資金回収のための、すなわち資金繰りを手助けする目的での資金調達目的の契約での名義貸しとされているが、その実質は、売買契約と立替払契約を仮装した資金詐取行為である。本件は、契約者と加盟店が共謀して行わなければ成立し得ない行為であり、契約者が販売店から売買契約は仮装ではないこと、販売店が責任をもって支払うことについて、虚偽とは知らず、契約締結の動機になっていたとしても、自分にクレジット会社に対する債務が一切発生しないことまでを信じていたわけではないと考えられる。

 特に本件では、上告人らはクレジット会社に対する債務の返済のために、口座振替を利用している点をもっと重視してもよいのではないか。

昔の名義貸し事件では、銀行や郵便局振込での返済にしておき、後日販売店が「責任持って支払います」といって、届いた振込用紙を回収し、支払っていました。

しかし、本件では、口座振替払になっています。周知の通り、犯罪収益移転防止法の厳格な施行により、ずいぶん以前から他人名義での口座開設はできません。したがって、本件は、本人口座銀行口座等からの振替が行われており、販売店からの入金により、決済されていましたので、一時的に自分に債務が発生するが、販売店が支払うことを認識して、口座振替手続きに応じていたとしか考えられないのではないか。

また、現在のクレジット契約申込書には、名義貸ししないこと等の注意書きがあり、契約締結時に勧誘方法等の確認が行われており、本件でも、納品受けた旨の確認がされているようである。

この責任を免除するのは、威迫・困惑状態に起これていたか、完全に欺罔状態に置かれている場合が考えられるが、本人は名義貸しをしていること、債務が発生し、自身の口座から弁済のための引き落としがなされることを認識して、契約しており、月々の口座引き落としを通帳で確認できたにもかかわらず、販売店の支払い停止までなんらの申し出がなく、販売店の支払い停止後に一斉に不実告知取消しの申し出がなされたという経緯を見る限り、該当しないと考えられる。

④販売店の説明とその内容の虚偽が取り消し事由に該当するか。

判決では、(告知の)その内容は、名義貸しを必要とする高齢者等がいること、上記高齢者等を購入者とする売買契約があることならびに上記高齢者等による支払がされない事態が生じた場合であっても本件販売業者において確実に上告人●らの非上告人に対する支払相当額を支払う意思及び能力があるといった契約締結を必要とする事情、契約締結により購入者が実質的に負うこととなるリスクの有無及びあっせん業者に実質的な損害が生じる可能性の有無に関するものということができる。したがって、上記告知内容は、契約締結の動機に関する重要な事項に当たるものというべきである。

「以上によれば、本件販売業者が改正後契約に係る上告人らに対してした上記告知の内容は,割賦販売法35条の31316号にいう購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものに当たるというべきである」(下線は、原文まま)とした。

そして、本判決では、「契約締結を必要とする事情、契約締結により購入者が実質的に負うこととなるリスクの有無、契約締結によりあっせん業者に実質的な損害が生じる可能性の有無等、契約締結の動機に関する重要な事項について、販売業者による不実告知があった場合には、これによって購入者に誤認が生じ、その結果立替払契約が締結される可能性がある。」として、不正な取引として一般に周知されている名義貸しの契約であっても、「購入者は販売業者に利用されたとも評価し得るものであり、購入者として保護に値しないということはできない。」として、保護すべき類型があることを認めた。

しかし、「名義貸しを必要とする高齢者等がいること、上記高齢者等を購入者とする売買契約があることならびに上記高齢者等による支払がされない事態が生じた場合であっても本件販売業者において確実に上告人●らの非上告人に対する支払相当額を支払う意思及び能力があるといった契約締結を必要とする事情」というのは、不正な名義貸契約の動機になることは否定しないが、契約当事者外の第三者に対抗できるものなのだろうか?

消費者契約法の媒介の法理、割賦販売法の取消し法理とも、当然に名義貸しという不正な契約を取り扱うことは前提にしていない。販売店がクレジット会社に対する債務を全て責任を持って支払う約束の不履行は、不実の告知には該当しないのは明らかである。また、高齢者との売買契約の存在は、高齢者からの回収を期待できたので、重要な事項に該当する可能性を否定しないが、実際に名前も住所も知らない高齢者からの最終的な回収を期待していたとは到底考えられない。

また、「契約締結により購入者が実質的に負うこととなるリスクの有無」について、その事実を知れば、当然に契約を締結しないクレジット会社に主張できるのか。本件では、そのリスクの見込み違い(販売店の不履行)が生じたに過ぎないのに、対抗できるのか。

そして、「契約締結によりあっせん業者に実質的な損害が生じる可能性の有無」については、予見できなかったということが、不正契約者の主張として許されるのか、仮に取消しが認められたとしても、クレジット会社からの不法行為に対する損害賠償請求が認められる余地が大きいのではないか、など、本件に適用した場合、そのハードルは高いといえるが、どうだろうか。

このような点から、差し戻し審で、信義則に反しないとしてストレートに取消しが認められる判決が出るとは考えにくいのではないか。

しかし、新聞報道のように、認められる可能性があるということで、「名義貸しをしても、うまく言い逃れれば、責任追及を受けない」というへんな考えが蔓延しないか。
特に、販売店サイドに、常連客に名義貸しを頼んでも、口裏を合わせれば、迷惑をかけないで済むから、名義貸しによる違法な資金の詐取を助長する、誤ったメッセージを発信することにならないかが、心配である。

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2017年1月18日 (水)

第11回貸金主任者試験合格発表を見て

本ブログは、忙しくて休眠状態なのですが、第11回(平成28年度)の貸金業務取扱主任者試験の合格発表があったので、だいぶ遅れましたが、コメントを一つ書いてみたいと思います。

まず、合格基準点について。

第6回が27点、第7回29点、第8回と第9回が30点、前回の第10回が31点と毎年のように上がっていたが、第11回の平成28年度は、30点に戻っている。毎年、30%を挟んだ合格者数になっており、昨年は、基準点は31問だったが、合格率は、31.2%で今年の合格者の割合が30.5%なので、例年通りの基準なのだと考える。

次に受験者数について

第6回以降第8回を除き、毎年1万1000人前後の申込み、1万100人前後の受験者数であったが、今回は、申込者数が11639人に対して、受験者数10139人と例年と変わらなかった。貸金業者数は、毎年減っているのに、受験生総数が減少しないのは、大手貸金業者において毎年受験対象者が新たに生まれていること、fintech関連企業など、貸金業法関連を知らなければいけないという人が増えていることが原因かなと思う。

そうであるなら、採用関係も増加傾向にあり、fintech関連企業が増加しているので、平成29年度は、増加に転じるかも。果たしてどうだろう。

今回の試験結果について

今回の発表から、従来の科目別出題数に加え、「平均正答率」が開示された。
今まで、個人は、これも本試験独特の開示請求制度を利用して、自分の正答・誤答を設問ごとに知ることができた。
しかし、今回科目別に平均正答率が開示されたことで、受験者指導をするものとして、強化すべきポイントがわかるので、ありがたい。
ただ、できれば、合格者の平均正答率と不合格者の平均正答率を分けてもらえるとさらにありがたい。このほうが不合格者に対する指導がより、明確になるからである。

なお、この開示を見て、想定外であったのが、貸金業法より、貸付に関連・付随する法律(民法や債権回収関係法)の平均点が10%も悪いという点である。

問題自体、基本的なところからしか出ていないのに、こんなに悪いとは、私の想像を超えている。

出題数の多い貸金業法に注力しすぎたのか、貸付に関連・付随する法律は、複数の法律にまたがり、やや分野が広いので、十分に理解できていないのか、いずれにしろ、今後の指導の大きな参考になったといえる。

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2016年11月22日 (火)

平成28年(第11回)貸金業務主任者資格試験回答速報

久しぶりのブログです。
11月20日に平成28年度(第11回)の貸金主任者試験が行われましたが、回答速報を望むほんの一部?の方のリクエストで久しぶりに書きます。現在、結構忙しいです。そんな中、昨日回答を考えてみました。
今年で11回、毎回回答を作っている私としては、昨年あたりから、少しやさしくなった問題が見受けられるようになり、「貸付け及び貸付に付随する取引に関する法令及び実務に関すること」の問題に過去問題の類問がちらほら見られるようになって来たかなと感じられます。
ただ、相変わらず、「法及び関係法令に関すること」の出題分野である貸金業法は、施行規則や監督指針からの出題が多く、非常に細かい点が正誤の判断に要する問題が散見されます。
誤っているとわかっている選択肢も、読むせいかもしれませんが、非常に疲れますね。
というわけで、模範解答を掲載します。今年は、合格基準点は何点かな?

                                                                                                                                                                                                       
1 11 21 31 41
2 12 22 32 42
3 13 23 33 43
4 14 24 34 44
5 15 25 35 45
6 16 26 36 46
7 17 27 37 47
8 18 28 38 48
9 19 29 39 49
10 20 30 40 50

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2016年6月27日 (月)

過払い金専門の認定司法書士に降りかかった最高裁判決

とうとう最高裁判所の判断が出ました。
ブログの休眠宣言をしたばかりですが、これは、少し触れていなければ、と休眠宣言の舌の根も乾かないうちに少しばかり、書かせていただきます。

(先日も、割賦販売に関する所有権留保に関する重要な下級審判決が出たので、いずれ、どこかで取り上げる予定です)


認定司法書士が、裁判で取り扱える事件は、簡裁民事訴訟手続きの対象となるもののうち、紛争の目的の価額が民事訴訟法3条1項6号イに定める額(140万円)を超えないとされ、裁判外の和解でも同様とされ(同7項)とされている。
しかし、紛争の目的の価額の解釈については、「個別債権額」説と「経済的利益」説があり、過払い金債権を扱う際に、貸金会社と認定司法書士間に解釈の争いがあり、弁護士も業際問題として問題にしてきた。

経済的利益説は、認定司法書士にとって、個別には債権額が140万円を超えていても、和解による利益(免除等の額など)が140万円以内なら取扱可能となるので、都合が良かった。
しかし、ついに最高裁が、以下のように判示し、個別債権説を取ることが明らかになったのである。http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85969
「債務整理を依頼された認定司法書士は,当該債務整理の対象となる個別の債権の価額が法3条1項7号に規定する額(140万円)を超える場合には,その債権に係る裁判外の和解について代理することができないと解するのが相当である。」

経済的利益が140万円を超えなければいいという,認定司法書士の主張は、明確に退けれれている。

明日から、直ちに違法行為となって、たちまち和解交渉ができなくなって、困ってしまう認定司法書士さんが少なからず、存在するのは、確実である。

さらに、本件は、違法な和解行為の対価として受領した報酬返還の返還をみとめたから、受領した報酬額に、法定利率を加えて返還しなければならない。

今まで仄聞したところによると「経済的利益説」で和解を進めてきた認定司法書士がほとんどなので、過去の依頼者が、一斉に返還請求をし始める可能性も考えられるから、こちらのほうが大変だ。

また、経済的利益説で裁判外行為を行うことが違法と判定されたから、司法書士会は、違法な業務をやっていた認定司法書士に対して、どういう対応にでるのだろうか?

そういえば、認定司法書士に対抗意識を燃やしていた某弁護士法人は、どういう対応にでるのだろうか

また、依頼者等から懲戒請求が出たら、法務省は、どうするのだろう。

いずれにしろ、違法な和解行為がなかったか、すぐに精査し、報酬を返還することを検討しなければ、今後の業務にも支障が出るのは確実だろう。

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2016年6月 7日 (火)

品川のよっちゃんは、しばらく留守にします。その間『判例で学ぶ よっちゃんのクレジット法務講話』に連載中です。

ずいぶんとご無沙汰しております。約半年も更新ができておりませんで申し訳ありません。
この半年間公私共にさまざまな執筆・研究発表などに追われ、また海外にも3回調査目的などでで出かけたりして、その合間に鉄道旅行もしなければならず(笑)、結構多忙な毎日をおくっていました。

最近のテーマは、来年施行される改正個人情報保護法関係と2015年日本再興戦略でも課題となっているキャッシュレス化の実現とセキュリティの整備関係です。
いろいろ、ブログで書きたいこともあるのですが、調査結果のとりまとめ、学会発表準備などが先で、ブログは後回しになっています。
したがって、しばらくブログのほうはお休みしたいと思います。

なお、ご存知の方もあるかと思いますが、4月からきんざい発行の月刊誌『消費者信用』に、「判例で学ぶ よっちゃんのクレジット法務講話」の連載を始めました。

今までも、いろいろな判例を取り上げ、その解釈や射程範囲を論じたり、法改正の必要性とその程度などを意見したりしていましたが、改めて、クレジットシステムの発展・進化に伴って、クレジット・クレジットカード、カードキャッシングの実務において過去どのような問題が発生し、どのような解決がなされて来たのかを整理しようとするものです。
判例は、その後関連法でルール化されたものや監督上の基本的な視点になったものもあれば、自主的な改善取り組み、自社のルールなどに組み込まれたり、商品設計の参考になったりするなど、それぞれ重要な役割を果たしていますが、その背景となった事情や時代背景・環境などに大きく影響されています。これらの事情を知ることは、単なる判例の表面的な理解だけでなく、将来の予測や事故の未然防止にも有用な本質的な理解につながると考えられます。
そして、これらの判例とその後の対応により、現在の法律や商品設計や取扱実務・債権管理の実務にどう反映されているのか確認し、現状も残る問題点や課題は何かを明らかにすることを試みることとしました。
どれだけ、この思いが実現できるかわかりませんが、今後の実務のあり方、商品の企画立案、ひいてはキャッシュレス化の一層の実現のための課題の解決のための参考になれば幸いと思っております。

現在以下のテーマで『月刊消費者信用』(金融財政事情研究会発行)で執筆しております。

2016年4月号 『放置された所有権留保自動車の撤去義務』

2016年5月号 『親のクレジットカードの無断使用と会員の責任』

2016年6月号 『盗まれたカードでの借り入れにおける契約者の責任』

2016年7月号 『信販会社の保証する銀行の目的ローンと抗弁権』(予定)

ご一読、よろしくお願いします。


 

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2015年12月16日 (水)

過払い金返還請求権につき時効の到来しているときに、第二取引における未払金請求債務と相殺できるとした最高裁判例

平成27年12月14日最高裁第一小法廷にて、不当利得返還請求本訴、貸金請求反訴事件の判決にちょっと注目。⇒ 判決

貸金業者から平成8年6月5日から平成21年11月24日まで借りていた人が原告であり、原告は、平成8年6月5日から借入れと返済を繰り返し、平成12年7月17日までで一旦完済(これを「第一取引」という)し、その後、平成14年4月15日から平成21年111月14日まで借入れと返済を繰り返していた(これを「第二取引」という)。

第一の取引と第二の取引を一連の取引として通算して、利息制限法の許容する利息で引きなおし計算すると、第一の取引に過払い金が発生していて、第二取引は、約定では、未払い残金があったが、過払い金が発生するとして、原告が返還請求を起こした。

これに対して、被告貸金業者は、第一取引は時効消滅を主張し、第二取引の引きなおし計算後の請求を反訴したのがこの事件です。

原審では、
被告貸金業者の第一取引は時効により、消滅したとしてその主張認められ、原告の「一連計算が認められず、第二取引において未払い額が発生するときは、第一取引における過払い金返還請求権を自働債権として相殺する」との抗弁は退けられています。

その背景として、民事訴訟法142条の重複起訴の規定の存在があったものと考えられます。

しかし、最高裁は、
民事訴訟法142条の重複起訴の規定は、第一取引の返還請求権が消滅時効により、消滅したと判断されることを条件として、反訴でその消滅した部分を自働債権として相殺の抗弁を主張するときは、抵触しないとして、第一取引の過払い金請求権について、民法508条の規定どおり、時効により消滅していても、時効で消滅する前に相殺適状となっている範囲内で、自働債権として相殺を認めるべきであるとして、相殺の抗弁を認めなかった高裁に差し戻したものです。

第一取引と第二取引とが、1年9ヶ月近く断絶しており、原審は、「一連計算」を認めていませんが、このあたりは、ほぼ定着?しているのかなと思われます。
貸金業者としては、原審の判断が最も望ましいものではありますが、一連計算が安易に認められない点でも、相当な有利になります。

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2015年11月17日 (火)

第10回貸金業務取扱主任者試験を振り返って

11月15日に行われた貸金業務取扱主任者資格試験は、もう10回目になるのですね。
今回も遅ればせながら、このブログで毎年続けている正答を下記に掲載しておきます。
参考にしてみてください。

今回の問題は、全般的に民法の問題が条文に近い形で出題され、代理の問題を除いて、短時間で回答できたのではないかと思います。

また、貸金業法の問題では、出題に過去も何回か出題された問題が多くなり、過去問をきちんと勉強した人にとっては、全体に易しかったのではないかと思います。
とくに、「不適切」な選択肢を選択する出題は、誤りが明確な問題も多かったように思うので、そう思うのかかもしれません。
しかし、全体を正確に覚えていない人にとっては、「債権者」と「債務者」の違いなど、一字しか異ならないのを見逃すなどして、「引っ掛かった」と感じる人もいるのではと思われます。

そこで今回の合格基準正答数ですが、今年こそ31問ではないかと思います。

今年はやさしかったので、通常なら、32問くらいが基準点になると思います。なぜ、それより以下を予想しているかというと、再受験者がどうもたくさんいるという点を考えてみました。
各社とも、新規の受験者とほぼ同数の過去受験者がいるようなのです。

数社の実績をもとに、傾向をざっくりと(本当にざっくりです。念のため)分析すると新規受験者は、30問で合格率40~45%前後、再受験者を10~15%前後の合格率のようです。
また、今回約1万人の受験者の半分が新規受験者として当てはめてみると、新規受験者は2000~2250人の合格、再受験者は500~750人合格となり、合計で2500~3000人が合格となるわけです。
そうすると、合格率は、25~30%となります。これが毎年の傾向でしょう。

合格率25%を前提とすると、少し今回はやさしかったので、今までの基準点で見ると30%を超える可能性があります。そこで、25%前後を合格とするなら、31問を基準にするのではないかと考えたわけです。

でも、前回の第9回試験のときも(⇒こちら)、やさしかったから、「32問が安全圏で31問を基準正答数と予想し、30問は微妙」としたところ、実際は、30問が基準正答数でした。
まあ、結局今回も同じかなあと思います。  

ところで、上記にも書いたように、各社とも、再受験者対策が悩みの種のようです。
受験指導をしている者として考えるのは、受験者が個別にどの分野ができていないのか、どのくらいの点数が取れているのか、を見て、個別指導するしかないのではないかと思っています。
その点で協会のユニークな開示制度を利用することをお勧めします。
これによれば、一人一人の点数と順位のほかに、、どの問題を間違ったかがわかりますので、理解不足の点を集中的にレクチャーすることができます。
現在有料ですが、来年4月から無料になる予定のようです。⇒ 協会HP

開示請求によって得た情報を分析し、不得意分野ごとに勉強会や研修を行うことが考えられます。      
では、私の回答速報をどうぞ。(速報性には欠けるかな?)                                                             

問題 正解 問題 正解
1 26
2 27
3 28
4 29
5 30
6 31
7 32
8 33
9 34
10 35
11 36
12 37
13 38
14 39
15 40
16 41
17 42
18 43
19 44
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2015年9月16日 (水)

平成27年9月15日最高裁判決を検討する。

久しぶりに過払い金に関する重要な最高裁判決が出された。

  ⇒ 最高裁平成27年9月15日判決要旨。 

NHKのニュースなどによると、過去に調停で一旦債務整理したあとでも、あとで過払い金があることがわかっても、取り戻せますよ、的なトーンになっている。

このままだと、毎日見聞きするテレビとラジオの特定法律事務所、特定司法書士事務所のコマーシャルの聞き飽きたナレーションが、来週辺りから変更になるのではないかと思われる判決である。

 

しかし、判決を見ると、適用ケースはきわめて限定されるものではないかと考えられる。

以下、最高裁判決に従って検討してみよう。

 

事案は、昭和62年から平成14年4月1日まで、上告人に吸収合併された貸金業者ABとの継続的金銭消費貸借契約に基づき、利息制限法を超過する利息の契約の元で、金銭を借り入れては、返済してきた顧客が特定調停を申し立てた結果、特定調停が成立して、残債務があるとして、その残高の確認と、支払約束、清算条項を定めた調停が成立したが、取引全体としては、調停時点で過払い金が発生していたことから、この調停を無効として、過払い金の返還と民法704条所定の利息の支払いを求めたものである。

 

ここで、留意すべきは、

本件確認条項において確認された被上告人のAに対する残債務額は,本件調停の調停調書の「申立ての表示」欄に記載された借受け及びこれに対する返済を利息制限法所定の制限利率に引き直して計算した残元利金の合計額を超えないものであった。もっとも,A取引全体の借受け及び返済を同法所定の制限利率に引き直して計算すると,本件調停が成立した時点で,過払金234万9614円及び法定利息2万7621円が発生していた。

 

という点である。

つまり、特定調停では、被上告人は、貸金業者Aに対して、

「申立人と相手方との間の平成10年3月11日締結の金銭消費貸借契約に基づいて,申立人が相手方より同日から平成14年3月20日までの間に18回にわたって借り受けた合計金207万8322円の残債務額の確定と債務支払方法の協定を求める申立て」

をしたのであって、実際にAと取引した「昭和62年から平成14年4月1日まで」のすべての取引が対象となっていなかったのである。

 

従って、調停条項では、借受金が元利合計金44万4467円であることを認め(「確認条項」)、これを23回の分割払いで支払うこと、「本件に関し、本調停条項に定めるほか、被上告人とAとの間にはなんらの債権債務がないことを相互に確認する」(「清算条項」)との内容が定められている。

 

このような特定調停に基づく、調停が成立していたのであるが、A取引全体の借受け及び返済を同法所定の制限利率に引き直して計算すると,本件調停が成立した時点で,過払金234万9614円及び法定利息2万7621円が発生していた。」のであって、原審では、過払い金があるにもかかわらず、残債務があるとした調停内容は利息制限法に違反するものとして公序良俗に違反し、無効であるとし、清算条項についても公序良俗違反を理由として無効として、過払い金返還請求を認めていた。

 

最高裁第三小法廷では、原審が「特定調停は公序良俗に反し、無効である」との判断を退け、「本件調停における調停の目的は,A取引のうち特定の期間内に被上告人がAから借り受けた借受金等の債務であると文言上明記され,本件調停の調停条項である本件確認条項及び本件清算条項も,上記調停の目的を前提」となっており、その限りにおいて「本件確認条項は,上記借受金等の残債務として,上記特定の期間内の借受け及びこれに対する返済を利息制限法所定の制限利率に引き直して計算した残元利金を超えない金額の支払義務を確認する内容のものであって,それ自体が同法に違反するものとはいえない。」として無効とはしなかった。また、清算条項についても、無効とは扱わず、「取引全体によって生ずる被上告人のAに対する過払金返還請求権等の債権を特に対象とする旨の文言はないから,これによって同債権が消滅等するとはいえない」とした。

 

つまり、簡単にいうと、原審は、特定調停が公序良俗違反だから無効として、改めて過払い金の返還請求を認めたが、最高裁は、特定調停の調停条項の効力はある、しかし、それは、あくまでもA取引の特定期間に関する調停条項であって、A取引全体に及んでいないので、A取引の全体を対象とする本件過払い金返還請求に対する効力は認められず、過払い金の請求に制約はないとして、過払い金請求を認めたのである。

 

結論的には、過払い金返還請求が認められており、救済に差がないように見えるが、貸金業者にとって、この差は大きい。

 

第一に、既に特定調停や通常の調停において、過払い金請求権を有する顧客と当該貸金業者間で当該当事者同士の特定の期間を対象にした調停が成立している場合において、手続きが金銭債務の有無やその内容の確定等を行うことを当然には予定しておらず、全体として利息制限法を超過しない額の支払いにとどまる限りは、これが無効とはならないと最高裁が考えていることが明確になったことである。

 

従って、例えば、長期間の継続的金銭消費貸借取引があったが、約定弁済が完了するなどして一時期取引に中断があり、その後取引が再開された場合で、中断後の取引全体を対象にした特定調停、調停、和解などが行われ、当該期間を対象とした引き直し計算に基づく残債の確認と支払い条項が定められれば、それは有効ということである。

 

第二点目は、清算条項についてである。

最高裁判決は、「本件清算条項に,A取引全体によって生ずる被上告人のAに対する過払金返還請求権等の債権を特に対象とする旨の文言はないから,これによって同債権が消滅等するとはいえない。」としている点に注目したい。

 

特定調停条項には、「被上告人とAは,本件に関し,本件調停の調停条項に定めるほか,被上告人とAとの間には何らの債権債務のないことを相互に確認する」との確認条項が定められていた。

これが、もし「被上告人とAは,本件調停の調停条項に定めるほか,Aとの取引全体によって生ずる被上告人のAに対する過払金返還請求権等の債権を含め、被上告人とAとの間には何らの債権債務のないことを相互に確認する」との確認条項であったならばどうであっただろう。

 

上記の例のように継続的取引が中断し、中断後の取引のみを対象とした調停・和解条項において「取引全体によって生ずる顧客の貸金業者対する過払金返還請求権等を含め、一切の債権債務のないことの確認」条項は、無効とされる可能性はきわめて低いのではないかと考えられる。
(追記:このように考えるのは、同一の継続的金銭消費貸借契約ではあるが、中断前の継続的な借り入れと返済による完済があって、当時発生した過払い金返還請求権を行使することなく、一定期間の空白期間後に新たに借り入れを行う場合、中断後のあらたな一連の借り入れが「過払い金充当合意」のある借入といえるか、判断が分かれていることにある)

 

今後、本最高裁判決を元に、新たな掘り起しが始まる可能性が高いが、ケースごとに本判決の射程か否かを検討していく必要がある。

 

 

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2015年6月 1日 (月)

とうとう貸金業者数が2000社を切ってしまった。

今月発表された金融庁の貸金業統計によると、平成27年4月末の貸金業者数は、1997社となり、2000社を切った。平成20年4月末の業者数8,852社からしても4分の一以下、ピーク時からするとほぼ20分の一以下(95.8%減)になっている。→ 貸金業統計
27年3月末に大手を含む複数都道府県に営業所を持つ比較的大きな業者数が300をきり、今回同一都道府県にしか営業所を有しない小規模な業者数が1700となった。世の中から、「貸金」へのニーズがなくならない限り、廃業など退出が続けば、新たな企業が創業されるはずであるが、創業を上回る退出が貸金業法制定時以降続いている状況に変化がないが、ここまで減っても、さらに減少傾向が続くとは、本当に異常な状態だ。
貸金業務を行うには、銀行と保険会社や、倉庫業など一部の業種を除いて内閣総理大臣(財務局)、又は都道府県知事に登録手続きを行わねばならず、そのためには、銀行や貸金業者等で業務の経験のある役員や従業員を確保し、さらに難関の貸金業務取扱主任者資格試験の合格者を従業員や営業所に対応して、一定の人員の確保が必要であるため、創業・企業が難しいのだろうか?

そうでは、あるまい。
大幅に減少しているのは、消費者向け貸金業者であって、事業者向け貸付残高表に表れる法人向け貸金業者数は、平成20年3月末の1,442社から平成26年3月末で665社に減少(53.9%減)しているものの、消費者向けの77.4%に比べると緩やかである(まだ、平成27年3月のデータがない)。
貸金業者は、現在利息制限法で許容する15~20%以下の金利でしか貸すことはできないが、20%でも貸せるのは、元本10万円未満であり、18%で貸せるものでも元本100万円未満であって、年間の利息額は、100万円未満の貸付では、18万円にも満たない。
一方、法人向け貸金業者の平均残高は、平成26年3月末で1億7780万円であり、年間利息は、10%なら1778万円であり、5%なら889万円になる。
つまり、小口の消費者向け(貸付平均残高458000円)では、18%の金利をとっても、82440円の利息収入しかなく、法人向け5%で貸し付けている場合と同じ額の利息収入を得るには、107件強の貸付件数を獲得しなければならないのである。
当然獲得件数1件あたりの広告・勧誘費用、事務処理のコスト、人件費は、消費者向けのほうがかかるから、同じ利息収入でも、営業利益は少なくなる。

個人の場合、総量規制で必要以上の貸付することがないから、貸し倒れリスクは、相対的に低くなってはいるが、収入は限定され、過払い金返還請求に応じながら、必要なコンプラコストを払いつつ営業するのが困難で廃業している一方、過払い金返還負担のない新規参入者にも、魅力がない業界になっているのであろう。
従って、消費者向け貸金業者は、今後も減少を続けていくしかないのであろう。

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2015年5月17日 (日)

消費者庁の消費者被害・トラブル額の6兆円推計に違和感

消費者庁の平成26年版消費者白書を見た。というのは、消費者委員会で今年の3月5日から「特定商取引法専門調査会」が開催されており、その第1回目の資料として提出された資料2「特定商取引をめぐる環境変化」の中に消費者被害トラブルの額として、約6兆円あり、GDP比で約1.2%に上るということが記載してあったからである。→ 消費者白書平成26年版資料はこちら(149~151頁をご覧ください)

推計の方法は、

消費者被害・トラブル額は単純化すると「消費者被害等の総数」×「消費者被害等1件当たりの平均金額」で求めることができるため、まず全国の満15歳以上から無作為抽出して意識調査を行い消費者被害等の「発生確率」
を求めた上で消費者被害等の総数を推計し、これに相談情報(PIO-NET情報)から計算される平均金額を乗じ、所要の補正を行って推計値を算出するという手法を採っています。

と記載されている。

白書においても、「必ずしも十分な精度が期待できるものではありません」との記載があるが、長期的には消費者行政の成果を測定するうえで有効な指標となる旨の記載があり、今後は、消費者行政の在り方に重要な影響を与える指標となっていくことが考えられる。

しかし、この数字をこのまま信じていいのだろうか? GDPの1.2%って、すごく大きな数字ではないか。

そのような私の疑問に応えるかのように白書には英国とオーストラリアの数値が参考値として掲載されている(151頁の図表4-1-33の下段)。これによれば、英国は、GDP対比約0.2%の30億8千ポンド、オーストラリアは、142.2億ドルGDP対比約1.0%の消費者被害があるという。

確かに、オーストラリアと比べると日本の数字もあまりおかしくないが、なんでほぼ同じ法制度をとっているオーストラリアが、英国の5倍もあるのか?不思議だなと思って、引用されている『Australian Consumer Servey 2011』にあたってみた。

該当箇所と思しきところ(ファイルの12ページ)

It is estimated that it costs Australian consumers a total of $14.2 billion a year to deal with consumer problems, based on the direct costs they incur and the time they spend dealing with problems.
Consumer respondents who took some form of action to resolve their most recent problem were asked to estimate the direct cost incurred.
These costs include things like paying for repairs or replacement products, telephone and postal costs, travel and petrol costs, legal costs and any other out of pocket expenses.
They were also asked to quantify the time they spent dealing with their problem.
The incidence of consumer problems reported in this Survey has been extrapolated to the total Australian population and multiplied by the average costs reported to provide a total estimate of time and money spent dealing with problems.
It is estimated that it costs Australian consumers $14.2 billion each year to deal with consumer problems.

簡単に要約すると消費者が要した直接費用にトラブルの発生率をかけて、オーストラリアの人口に基づく計算をしていますので、消費者白書と同じ計算ロジックのように見えます。しかし、決定的に違うのは、この費用は、問題解決に要した費用であり、修理または交換製品、電話、郵便費用、出向いた費用やガソリン費、訴訟費用およびその他の支払いとして消費者が支出した費用が含まれています。具体的なコスト計算は、68頁(ファイルの86頁)に記載されており、その合計が14.22billionとされています。

したがって、この数値を被害額としてGDPの比較の対象とするには、不適切ではないだろうか?

もう一つの英国のconsumer detriment 2012のほうは、原典ではなく、消費者庁の資料が見つかった。→ 消費者庁資料

なお、この資料によると、、我が国の推計とほぼ同様な方法で推計されており、英国の2008年の調査では66億2千万ポンドの被害があり、2012年には30億8千万ポンドに半減していることが判る。(その理由が知りたいところである。)

我が国とほぼ同様な調査で、英国では、GDP対比2008年で約0.4%  2012年で約0.2%ということであるから、我が国の推計による被害額は、イギリスの3倍から6倍という大きなものになる。下記の参考にも書いているが、オーストラリアと比較しても3倍以上である。我が国は、他国と比較してそんなにひどい状況なのだろうか?

消費者被害6兆円という数字が独り歩り歩きしないうちに、検証していただきたいものである。

(5月17日23時追記)

このように違和感を感じるのが、発生確率が、人単位になっていることと平均被害額の設定にあると考える。13人に1人(というのは、いかにも多すぎるのではないかという点にある。

まず、発生確率から、見てみよう。
手元にある2013年消費生活年報2013年版と日本の消費者統計から導ける消費者相談の発生率は、平均単価が1万円前後と低いクレジットカードは、マンスリークリアが平成24年dp25億9388万件の取引に対して、消費者相談件数は、22,063件で発生率は、0.00085%、支払期間が2月以上の包括方式で1億1797万件で118,645件で0.01581%に過ぎない。低単価のため、相談が少ない可能性があるが、仮に100倍あったとしても、発生率はやっと1.5%になる。件数でなく人で見ると、20歳以上の人口が1億800万として、約8割がクレジットカードを保有するといわれているので、8000万人で2つの相談件数を合算したものを割ってみても、0.175%に過ぎない。
これに対して、問題商法が多かったとされる個別クレジットについては、平均単価は約150万円と消費者相談の平均購入額128万円(2013年)とほぼ同じ(個別クレジットの場合、分割払い手数料が加わっているため)であるが、148万件の取引に対して、消費者相談は20,616件で発生率1.39562%となる。

契約額がほぼ等しい個別クレジットの場合と比較しても、5倍以上の発生確率となっているが、クレジット取引の問題点が強調される中、現金取引でその5倍以上あるというのは、にわかに信じられない。

次に、既払い額=被害額が2013年54万円となっている点である。推計に当たっては、単純にこの額が用いられているわけではないが、クレジット取引で見たように、購入額が高いほど消費者相談の発生率は高いのであり、アンケート調査では、購入額が小さいものの、不満を持っている消費者も回答していることをもっと考慮すべきではないだろうか。今後は、不満がある取引の価格帯、被害額を回答してもらう形に変えて精度を高める必要があるのではないか。(以上追記終わり)

(参考)
ところでこの資料には、なんとオーストラリアの先の資料の内容も記載してある。ここでも、被害額として、直接費用56億ドルとして、紹介している。これだけをGDP対比でみると0.38%になる。
しかし、この直接費用(消費者庁の言う被害額)は、質問内容を見るとどうしても、我が国とは、内容が違うことが明らかですが、、、。しかも、「過去2年間」の被害をたずねているし、。。

(質問内容と翻訳を消費者庁の資料から引用)

④設問の内容
a.被害の有無
Thinking about all the products and services you have purchased in last two years,have you experienced any problems in any of the following ategories?This might include times when you believe you were misled or exploited by a business or wen you purchased a product that was faulty or did not operate how you expected it to or purchased a service that did not deliver what you expected it to.
「過去2 年の間に購入した商品・サービスで、不良品や、期待どおりに提供されなかった
サービス、行われなかったデリバリー等の経験はありますか」
b.被害額
Approximately how much money have you spent trying to resolve this problem?We would like you to consider all direct costs not including the cost of your time spent dealing with the problem this could include things such as paying for repairs or replacement products, telephone and postal costs, travel and patrol costs, leagal costs and any other out of pocket expenses.
「(生じた)問題を解決するために、だいたいいくらぐらいのお金がかかりましたか?直接的にかかった費用についてご回答ください。修理代や商品の入れ替え費用、電話代や郵送費、旅費・ガソリン代、法的費用や現金支出費などを含みます。なお、この問題解決にかかった時間は含みません」

(引用終わり)
被害の意味が違いますよね。

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